・脳波に関する生理学
意識の維持の為には中脳の上部脳幹網様体、視床非特殊核、広汎視床投射系から
なる上行性毛様体賦活系の機能が重要である。脳波はこの内、視床非特殊核を起源
とし、ここから大脳皮質Ⅴ層の大錐体細胞に伝わり、脳表面まで広がった電気活動を
電極で観察していると考えられている。
素人にも分かるように述べると、要するに「脳の奥底」から「脳の表面」に向けて発射さ
れる電気の流れを「波」という形で大まかに見ている訳である。
脳の電気活動には興奮性シナプス後電位(EPSP)と抑制性シナプス後電位(IPSP)、か
み砕くと脳の特定領域を興奮させる電気活動と鎮静させる電気活動の二種類が存在
する訳だが、特に脳波はこの内、興奮させる方の電気活動(EPSP)の関与が大きいと
考えられている。
・正常脳波について
脳波検査では下記の4つを知っておけばいい。
振幅とかHzはどうやって見ればいいかと言うと、脳波スケールという脳波用の定規みたいな
ものがある(デジタル脳波計ではそういうツールがある)ので、それで逐一確認するといい。
具体的な形に関してはこのページの画像がかなり参考になった。
α波: 8~13Hz前後のさざ波。安静・閉眼・覚醒状態で後頭部優位に出現する。
要するに「こいつ、今意識あるよ」という意味を表す脳波。
なお、昏睡状態でα波が検出される場合はα昏睡といい、脳幹の重篤な障害である
可能性が高い為、まず死亡する。因みにα昏睡は神経内科医を30年やっている人間
でも見たことがないというレベルのレアさなので、「意識障害」の人で器質的病変が頭
蓋内になく、脳波検査で「α波」が見られたら「あ、こいつ寝たふりしてやがる」と考える。
β波: 13Hz以上のさざ波。別名速波。覚醒時、入眠時、薬物使用時に出現。振幅は20μVく
らいで、50μVを越えている場合は異常。異常となる場合は精神発達遅滞、脳手術
後、頭部外傷など。
θ波: 4-7 Hzの緩やかな波。うとうとしている時以外に出現したら異常。
上記以外では意識障害をきたす種々の疾患で出現する。
δ波: 3Hz未満の緩やかな波。深く寝ているとき以外に出現したら異常。
上記以外では意識障害をきたす種々の疾患で出現する。
なお、δ波とθ波を併せて「徐波」と呼称することが多く、θ主体であれば脳機能障害の程度は
中等度程度、δ主体であればほ脳機能障害の程度は重症と考えても良い。
まとめると、脳はより細やかな脳波が出ていればいるほど興奮しており、細やかな脳波がなけ
ればないほど脳が活動していない、という風に考えることが出来る。
なお、δ波すら出ない状態を「脳波の平坦化」といい、一般的に脳死と考えるべき所見である。
異常脳波については後日記載。
・脳波測定における電極の配置について
脳波検査において脳波の形態はもちろん重要であるが、それと同じくらい重要なのは電極の
位置、つまり「脳のどの辺り」で主にその脳波が出ているのか、という点である。これを理解し
ようと思うのであれば、まず電極の配置を覚える必要がある。これは全世界で統一された配置
の仕方があり、これを国際10-20法という。これから個人的にどう覚えたか示そうと考えている
が、その前にまずwikipediaから抜粋した下の図をご覧いただきたい。
でっぱりがある方が鼻側、上記の図はCTtとは異なり、左は左、右は右である。
上記はアルファベッドと数字の組み合わせで示されているが、中には上記を番号で表記する
施設もある為、各番号とアルファベッド、そしてその正式名称を下記に記載していく。
1=Fp1=左前頭極部 2=Fp2=右前頭極部 3=F3=左前頭部 4=F4=右前頭部
5=C3=左中心部 6=C4=右中心部 7=P3=左頭頂部 8=P4=右頭頂部
9=O1=左後頭部 10=O2=右後頭部 11=A1=左耳梁 12=A2=右耳梁
13=F7=左前側頭部 14=F8=右前側頭部 15=T3=左中側頭部 16=T4=右中側頭部
17=T5=左後側頭部 18=T6=右後側頭部 19=Fz=正中前頭部 20=Pz=正中頭頂部
24=Cz=正中中心部
この内、1~4は前頭葉、5、6は運動感覚野、7、8が頭頂葉、9、10が後頭葉、13~18が側頭葉
の脳波を反映していると考えられている。
僕個人はまず奇数番号が左、偶数番号が右。11、12が耳という事は暗記し、後は1から10まで
を前から順に並べていき、残りは6つを頭の横側に並べる、19以降は余ったものを前、後ろ、中
と並べると覚えた。
今日の勉強はここまで。
こういう科学的な内容をごく単純明快に言語化し、理解するって難しい。
次は電極のつなぎ方について学習してみようと思う。
(参考文献)
脳波の手習いシリーズ(天理よろづ相談所病院 臨床病理部 神経機能検査室HP)