山梨学院大学 熊達雲特任教授
9月5日、日本国際アジア共同体学会2026年度年次大会が東京にて開催された。大会テーマは「パラダイムシフトが深化する世界」で、同学会理事長で元オランダ駐在大使の東郷和彦氏が進行を務め、元内閣総理大臣の鳩山由紀夫氏が開会挨拶、元外務大臣の岩屋毅氏がビデオにて祝辞を述べた。
鳩山氏は挨拶において、自身の北京訪問体験を振り返った。同地で開かれたアジア運命共同体シンポジウムに参加し、人型ロボットの見学や自動運転車の試乗を通じ、日本が多くの先端技術分野で中国に遅れをとっている現状を認識し、真の反省が必要だと指摘した。
また、日本国内に蔓延する「中国が強大化すれば米国のように覇権を握る」という誤った見方を批判した。中国政府は長年、平和共存五原則を堅持し、国家の大小にかかわらず平等を旨とし、言動を一致させてきた実績があり、中国が米国の覇権路線を踏襲することはないと強く信じると語った。
さらに鳩山氏は、日中関係の悪化と日露関係の緊張の背景を分析し、日本社会と政府に日米同盟の再検討を呼びかけた。高市内閣に対し、米国に追随して中国と対立し、米中対立を煽って利己的な利益を得ようと企める外交姿勢を転換し、米中関係改善の架け橋となり、日中関係の回復・発展、アジア共同体の構築に向けて中国との協力を強化するよう求めた。
岩屋毅氏も現行日本外交の課題を指摘し、三つの改善方針を提示した。第一に、日米・日中の特殊な立場を活用し、米中の安定的な関係構築を支援する仲介的役割を担うこと。第二に、価値観を共有する韓国との友好協力関係を深化させること。第三に、ASEAN諸国と対等なパートナーシップを強化することである。
右傾化が進む現在の日本政界において、鳩山氏のように冷静かつ客観的な対中認識を持ち、公に公正な主張を展開する政治家は極めて少ない。そのような声は日本の社会全体への影響が限られているが、こうした理性的な思考が存在すること自体、日中関係には依然として改善の余地が残されていることを意味する。時代の変化と日本国民の中国に関する認識の深化に伴い、このような対中観がいずれ社会の主流となることが期待される。
大会は四つの専門分科会で構成され、12名の学者が研究報告とコメントを行った。四つのテーマは「激動する欧州民主主義の動向と日本の進路」「ホルムズ海峡危機後の世界と日本の生存戦略」「米中首脳会談後の国際秩序と日本の米国依存体制」「軍事安保から環境・人間安保への転換と国防費三倍増の弊害」である。
各学者の報告は視点が独創的、分析が鋭く、現状批判が的確で、提言には先見性と実行可能性が備わっており、極めて高い学術的価値を持つ盛会となり、聴講者に多くの啓発と刺激を与えた。
閉会に際し、元ベトナム・韓国・フランス駐在大使の小倉和夫氏が特別講演を実施した。小倉氏は日中史上の五度の戦争を分析し、うち三度が国際秩序のパラダイムシフト期または変革前夜に勃発したことを指摘した。また、古代の遣唐使は中国の先進文化・制度を学ぶ目的のほか、中国の国情を探る偵察的役割も担っていたと指摘した。
この歴史的分析は現代の日中関係に重要な警鐘を鳴らしている。両国は歴史を鑑とし、秩序変革が進んでいる現在、過去の対立の過ちを繰り返すべきではなく、特に日本は歴史の教訓を汲み取り、対中関係において無謀な行為を避けなければならない。国際アジア共同体学会会長進藤栄一先生により総括を行い、アジアの運命共同体の実現に取り組んでいくように頑張ろうと呼びかけた。
なお、本大会は当初8月上旬の開催が予定されていたが、一ヶ月間延期・会場変更となった。一部の右翼勢力が開催情報を察知し、会議に対する妨害行為を暴言したため、主催者は会場を提供してくる機関へのイメージと会議参加者の安全を配慮し、開催計画を調整せざるを得なかった。このことは、高市政権下で日本社会の右傾化が深刻化しつつある現状を如実に物語っていると思われる。