今夏、第17回夏季ダボスフォーラムが遼寧省大連で開幕した。90カ国・地域から1700人余りの政界、産業界、学術界、メディア関係者が集い、「規模化イノベーション」をテーマに、世界のイノベーショントレンドと産業変革の方向性を議論し、低迷する世界経済の回復に向けた新たな成長路線を探った。
 
夏季ダボスは2007年に初めて中国で開催されて以来、大連と天津の2都市を会場とし、成長企業と業界リーダーの対話プラットフォームとして定着。新興市場の動向を読み解くバロメーターとして注目を集めてきた。
 
6月24日、李强国務院総理は開会式に出席し、基調講演を行った。総理は、安定した環境とイノベーション駆動こそ、中国経済が長期的に安定成長を維持する二大鍵だと指摘した。世界は中国のイノベーションの成果に目を向けがちだが、その裏にある長年の研鑽と不断の努力は十分に知られていないと強調。中国のイノベーションは各産業が現場で磨き上げ、巨大な市場で活用され、厚みのある産業エコシステムによって育まれたものだと述べた。
 
中国は今後も基幹技術の難関突破、基礎研究能力の強化を進め、科学技術と産業イノベーションの融合を深化させ、資源配分の障壁を取り除き、社会全体のイノベーション活力を引き出す。国際社会で話題となる「中国チャンス2.0」について総理は、中国の新産業技術・製品が世界にもたらすのは衝撃や脅威ではなく、発展の機会と産業へのエンパワーメントだと明言した。
 
現在、世界の技術革新はスピードを増す一方、技術障壁や分断化の動きも強まり、世界経済の成長に支障をきたしている。このため各国は連携を深め、開放的な世界経済を共に築き、サプライチェーンの安定を守る必要がある。AIなど新技術の国際ルール整備と規制体制の強化を進め、企業にはイノベーションの牽引役、互恵協力の実践者、中国発展のパートナーとなるよう呼びかけた。
 
地政学的紛争と貿易分断化が重なり、世界経済の不確実性が高まっている。国際通貨基金(IMF)は2026年の世界経済成長率見通しを3.1%に下方修正した。2027年は3.2%に回復すると予測されるものの、貿易制限や財政引き締めが新興国を中心に重い負担となる。今回のフォーラムでは「不均衡な世界」「閉鎖経済への反対」「工場と雇用の再構築」などの議題を設け、世界経済の課題解決を模索する各国の思いを反映した。世界経済フォーラム幹部は、現在の国際情勢を「矛盾」で表現。地政経済の分断が進む一方、テクノロジーの飛躍的発展が産業と社会を塗り替えつつあると指摘した。
 
中国は第15次5カ年計画綱要で対外開放の高度化と多国間互恵協力を掲げ、フォーラム期間中に同綱要の解説イベントを多数開催し、中国が単独の発展ではなく開放とチャンス共有を目指す姿を世界に示した。
 
各国首脳も協力成果を紹介し、中国との連携の可能性を強調した。カザフスタン首相は一帯一路構想がユーラシア大陸の連結に新時代を切り開き、世界経済の枠組みに決定的な影響を与えていると評し、同国が中国の信頼できるパートナーであり続けると表明。マレーシア投資開発庁長官は、中国のグリーン技術、EV、デジタル経済の進展がASEAN諸国に広大な協力余地を提供すると述べた。タイデジタル経済・社会相も、中泰協力枠組みの下、中国の政策ノウハウ、投資、デジタル産業基盤構築の支援に期待し、タイのデジタル経済持続的成長を後押ししたいと語った。
 
フォーラムの中心テーマである「規模化イノベーション」はAI、新エネルギー、バイオ医薬、量子テクノロジーなど先端分野に焦点を当てる。従来の技術開発論議と異なり、今回は「開発した技術をどう産業規模で実装し、経済価値に転換するか」が議論の核心となり、中国の新質生産力の実践が模範として注目された。
 
世界経済フォーラム大中华圏会長は、現在の国際環境が複雑な経済圧力に晒される中、テクノロジーの恩恵を工場、サプライチェーン、雇用現場に浸透させることが最重要課題だと説明した。エリクソン上級副社長は、米国がソフトウェアとAIモデル開発に投資を集中するのに対し、中国は完備した製造産業と巨大市場を強みに「フィジカルAI」の実用化を先行させていると分析。宇樹科技のロボット、比亜迪(BYD)や小米の自動運転技術が代表例で、産業実装の高い効率から同分野で爆発的成長が見込めると指摘した。
 
近年、DeepSeekや宇樹科技といった中国スタートアップが国際的な注目を集めると同時に、外資の中国イノベーション分野への投資も拡大している。今年1~4月、全国に新設された外資企業は2万社を超え、3000社余りが追加投資を実施。ハイテク産業への実行外資は2桁成長を維持した。安定した投資環境と豊富な人材を背景に、多国籍企業は研究開発拠点を中国に移転する動きを強めている。
 
多国籍企業の中国に対する認識も変化している。かつては生産拠点・消費市場として注目されていた中国だが、現在はイノベーション試作、技術の規模実装の中枢地として評価されている。中国の競争力は生産能力だけでなく、技術の産業適応と商業化の速さにもあり、世界の技術進歩に重要な貢献を続けている。
 
国内でも各地方政府が試作・実証プラットフォームを整備し、ロボット、低空経済といった新産業の商業化を加速。20年の歴史を持つ夏季ダボスは、世界が中国を知る窓を超え、中国と世界が双方向に連携する対話の架け橋となった。技術と実体経済を融合させた中国の規模化イノベーションモデルは、自国経済に持続的な強靭性をもたらすだけでなく、世界の産業高度化と経済回復に新たな活力を届け続けている。