あくまでも1人の関西人として、関東の食文化について個人的に思うこと。

 
よく関西人は関東の食文化について、こんな感想を持つのが一般的だと言われている。
・味付けが濃い
・やたら醤油味
・出汁の旨みを感じない
・大味
 
まあ、関西人の僕としても、何度も東京なんかで食事はしてるが、これらの感想を持ったことがまったくないと言えば嘘になるね。
確かにある。
しかし、だからと言って僕は東京での食事を「不味い!」と感じたかというと、正直言ってそんなことは無かった。
醤油味の効いた濃い味つけも、それはそれで美味しいと思えた。
 
たしかに、出汁の旨みと素材の味のバランスで最小限に味つけされた関西の味と比べると、荒っぽくは感じる。
でも、荒々しい武家の街であった江戸の食文化が、都があった雅な関西の食文化と違うのは当然の成り行き。
そこを理解していれば、それはそれで楽しめると思えた。
 
むしろ関西人の僕でも、関東の食文化に感謝していることが、実は3つある。
 
それは寿司、そば、おでんだ。
これらは関西ではなく、江戸の食文化を起源として生まれたものだからだ。
関西人の僕としても、この3つが人生の食の楽しみに欠かせない存在であることは間違いない。

中でも、特に寿司。これは言うまでもなく今最も一般的な江戸前にぎりのことだ。
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関東の人がどれぐらい認識しているかは知らないが、もともと寿司と言えば、関西発祥のなれずしや押し鮨など、いわゆる加工食品であった。
今でも関西では滋賀の鮒鮨、大阪のばってら、小鯛雀鮨、奈良の柿の葉鮨など、要するに魚を生の切り身で乗せるのではなく、発酵させたりしめたり加工して食べる鮨がたくさんある。
実はこれら関西の鮨こそ、今の寿司の原型であった。
江戸時代になって、東京湾で取れる新鮮なとれたての魚をそのまま飯の上にポンと乗せてさっと食べる江戸前にぎりが流行したそうだ。
手間暇のかかる関西の鮨とは対極の、要するに今で言うならファストフードだ。
江戸前にぎりは、今で言うマクドナルドだったわけですよ。

しかし、この江戸前にぎりというのは実に美味い。
昔、都があった京都は海から遠く離れていたため、生で魚を食べることはできなかったため、なれずしなどの加工食品として食べられた。
ところが今の時代は、運輸技術が当時とは比較にならない。
どこでも江戸前風の新鮮なにぎり寿司が食べられる。
江戸の食文化で最も天晴れなのが、江戸前のにぎり寿司だと僕は思う。
 
関西の食通の中には、関東の食文化というだけでバカにする人もいる。
でも、僕はそうは思わない。
海洋国家の我が国で、新鮮なネタで握った寿司を食べずに死ぬ人生などありえへんでしょ、と言いたいね。

ただね、ひとりの関西人として最後にこれだけは言わせてもらう。
江戸前にぎりというのは、今で言ういわゆるファストフードなんですよ。
何度も言いますが、マクドナルドと同じ分類に入るわけですよ。
ならば、ひとり何万円もする江戸前にぎりというのは、本来おかしいですよね。
例えるなら、10万円もする使い捨てカメラとか、3000万円もする軽自動車とか。
それぐらいおかしいんですよ。

江戸前のにぎり寿司というのは、本来ファストフードであるならば、パパッと食べてちょこっと飲んで、一人数千円で済まないとおかしい。

これだけは、関西人として釘を刺しておきたいとこです。

銀座の高級寿司店で何万円もするお寿司食べるとか、はっきりゆうて、アホちゃうかと思うね。

僕の住む関西のある街では、めっちゃ美味い新鮮なネタのにぎり寿司を腹一杯食べて、そこそこ飲んでも一人三千円前後です。
これこそ、江戸前にぎりの流れを汲む正統派の寿司屋やと思う。
銀座のお寿司屋さんには実に皮肉なことに、関西の地方都市にこそ、本来の江戸前にぎりが残っているのでおます。