第三十八陣 重要なことは後から思い出す。 | north・east・ern.fight

north・east・ern.fight

凍えてしまった心を、溶かしてあげたいのです。

 

 

慶次side

 

 

 

 

うっすら雪が積もっている道を、馬に乗って水南と歩く。

今は加賀に向かっている最中だ。

時折話し掛けてみるも、必要最低限の返答だけで、水南は暗い表情をしていた。

それに対しては気にする素振りをしないよう、おれはなるべくいつも通りを心掛けた。

 

やがて武田信玄が治める甲斐へと入る。

初めて水南と会った場所でもある甲斐の城下で、今日は泊まりかな。

 

夕刻だけれど空には厚い雲がある為か、夜のように暗かった。

城下に着いてから、ちらちらと降り始めた雪に、やっぱ冬だなあなんて思う。

橋を渡って水南に話し掛けると返事がないので不思議に思えば、水南は橋の上で京南をとまらせ、川を見ていた。

 

 

 

「どうしたんだい水南」

 

 

 

馬から降りて、水南を見上げながら問う。

彼女は視線は川に向けたまま、呟くように言った。

 

 

 

「…前に、此処で同い年くらいの女の子に会って」

 

「そうなのか」

 

「…ウチのこと、友達だ、って言ってくれて。…色々助けてもらったから、

 お礼が言いたくて、会いに来たりしたんだけど、全然見つからないし」

 

 

 

友達ってやっぱりその場しのぎの嘘だったのかな。

そう言って視線を更に下げてしまった水南の頭に手を伸ばす。

 

 

 

「!?なにすんの!」

 

 

 

ぽんぽん、としてやりたいところだったが敢えてぐっしゃぐしゃにかき回した。

 

 

 

「はは、やっと顔上げた」

 

「…そっちが上げさせたんでしょ」

 

「その女の子もさ、事情があるんじゃないかなあきっと。中々会えない理由みたいなの」

 

「……そういえば、…」

 

「ん?」

 

「…姫様、って呼ばれてたかも…」

 

「………」

 

「………」

 

「……もしかして…その子、夜月姫様…?」

 

「え…なんで名前知ってんの」

 

「え…知らないの水南」

 

 

 

……寧ろ姫って呼ばれてたことをなんで今まで忘れてたんだ、とちょっとだけ呆れたけど。

この甲斐で姫、って言ったら、最近武田信玄が養子にしたことで有名になった、真田夜月姫のことに違いない。

というか、そりゃあ城下を探したってそう簡単に見つかるわけもない。姫様なんだもの。きっと館にいると思うし。

そんなふらふらはしないだろう…ってふらふらしてるこの子も一応お姫様だった。

 

館に行ってみるか聞いてみたけど、今はそんな気分じゃないからやめておく、と言われ頷く。

ちょっと安心したような、ふっきれたような表情になっていた。

その日泊まろうとしていた宿の女将さんと水南は顔見知りらしく、ちょっと無理はしてそうだったけど女将とも楽しそうに話していた。

お…これって一歩前進したんじゃない?なんて嬉しくなった。

 

…部屋に入ってから何故か窓から鳥がやって来て、水南を見下すように見たあと、

頭を思いっきり突っつかれている光景は、流石に疑問だったけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

久々に更新…短いけど。いやあ、創作意欲はあるくせに思うように進まないね…。

最後の鳥はいつだか水南に手紙を届けた夜月の鳥。

水南が甲斐にやってくるのを見ると何故か突っつかれると言う謎設定。

なにかが気に食わないんだね!!←

 

 

よろしかったらお願いします↓

 


にほんブログ村