嗚咽した。

夕暮れ、もう暗くなりかかっていた。現場裏のぼろアパート。救急車がやってきた。
誰かに何かがあったらしい。

湿った現場だった。毎日が梅雨のよう。

仕事に没頭。そのすぐ後で裏に隣接してる所で作業してるでゅっさんと話した。

”死んでたらしいで。”

”1週間以上経ってるらしいで。””おれたちここ、1週間以上はいってんじゃん。”

異臭がしていた。嗅いだことのないにおい。

それとわかった瞬間から狂った。




子供にもどった。あの頃のようにむきだしで、仕事なんか投げ捨て30mくらい逃げた。
嗚咽した。

こういう時に人の強さは現れた。
小原君はもくもくと掃除してた。
でゅっさんは強かった。

おれは逃げていた。誰が親方かわからない。

死臭。死んでほっておかれたら誰もが放つにおい。

匂いの力ははんぱじゃない。
言葉の陳腐なこと。

相手は人間。みんな一緒さ。