さつきちゃんにとって一人で、東京までの汽車の旅って、色々な事を考えるには、十分な時間だった。ただし、考えたことの答えが出るというわけではないけれど、亡くなった、お婆ちゃんのこと、半年間だけど一人にしてしまったお爺ちゃんのこと、離婚して自分を捨て、それぞれが再婚して新しい家庭をつくっている人たちのこと。そして、その新しい家庭で、母親は新しい子供をつくっている、そして、その子たちは、母親に捨てられることなく育てられている。このことは、さつきちゃんをずっと苦しめてきている、何故、父親が違うだけで、捨てられる子と捨てられないで育てられる子がいるのか、同じ自分のお腹の中に、宿った命なのに、父親を嫌うだけで、その間に出来た子供のことまで、嫌いになるものなのかとか。よく、テレビのドラマでは、離婚しておいて来た子供や、何かの事情で手放さなければいけなくなった子供のこと、一日も忘れたことが無いとかいうのあるけれど、なんかそれはそれで嘘くさく、捨てた親がやたら、美化されていたりして、それはないでしょなんてこと思ってみたり。
きっと、さつきちゃんは、本当のこというと、誰にも言ったことないけれど、お母さんっていう人に、会ってみたいって思っている。でも、自分から、その人に会いに行ったりしたら、自分が負けてしまったような気がして、会いに行くのが怖いって、だから、さつきちゃんは、絶対にこれから先も、その人に会いに行くことはないって、改めて決めた。そして、一番怖いのが、この先、自分が結婚をして、子供が生まれた場合に、ちゃんと愛情を注いで育てることが出来るのか、それともどんなに嫌だと思っていても、自分にも自分を捨てた母の血が流れているから、何かの拍子に自分の中の母の血は出てきて、子どもを捨てたりしてしまうのか。もし、そんなことを自分がしてしまったら、自分で自分のことが許せなくなったしまうだろうって、そうなってしまったら、さつきちゃんはどうするんだろうって。
このことは、考えるの止めよう、そうそう、止めよう、このことを考え出すと、さつきちゃんは、どつぼにはまってしまうから、そうするとダメージが大きくて、なかなか立ち直れなくなってしまうから。
少しの間、目に入っては消えていく景色を、何も考えずに見る。消えていく景色を見ながら、きっと自分の人生もこうして消えていくんだろうなって、スピードは違うけれど、なんてことを思った。
それから、また、自分と今まで、関わってきた人たちのこと考えてみる。孝ちゃんのこと、残された孝ちゃんのおばさんたち、幼なじみのガンちゃん、たっちゃん、そのおばさんたち、そして、ずっと会っていない尚ちゃんのこと、お婆ちゃんにお線香をあげに来てくれた尚ちゃんのおばさんのこと、お婆ちゃんが入院していた時に、友達になったAちゃん、みんなが知っていた難病のお姉さんのこと、利恵ちゃんのこと。
そして、これからの自分のこと。
つづく