何も知らないで、学校から帰ったさつきちゃんは、お婆ちゃんに、振袖を着せられて、呆気にとられているさつきちゃんとは、対照的に満足そうな顔をしているお婆ちゃん、そのお婆ちゃんを見て、胸が詰ってきているお爺ちゃん。
『少し大きいね。でも、さつきは、これからまだまだ大きくなるから、並寸で作っておいたから、大丈夫だよ。色も柄も良く似合っているよ。良かった、やっぱり新しいのにして、七五三のをって思ったんだけれど、うんうん。よく見せておくれ、ほら、後ろも、いいね。帯も、奮発してよかった。どうです、お爺ちゃん、これだと、そうそうよその人に引けをとらないですよね』って、お婆ちゃんは、絶対に忘れないように、そして、あと何年かしてさつきが二十歳になった時を想像しながら、言うと
『ああ、誰にも負けない。さつき、よく似合っているぞ』って、お爺ちゃんが言うと、お婆ちゃんは、さっきよりももっと満足そうな顔をした。
『今日って、なんかあるの』って、さつきちゃんが聞くと
『なんにもないよ』って、笑いながらお爺ちゃんとお婆ちゃんが
『本当に、似合っている』って、わけ分かんなく着せられた着物だけれど、そこは女の子、やっぱり嬉しいものだ。
『よく、似合っているよ』って、お爺ちゃんとお婆ちゃんが、何度も言う
『この着物はね、さつきが成人式の時に着るんだよ。だから、これから毎年、虫が食わないように虫干しをしなきゃいけないよ』って、お婆ちゃん
『ふーん、そうなんだ。ねえ、みんな見せちゃ駄目』って、聞くと
『いいよ。でも、走っちゃ駄目だよ。転ばないように』って、お婆ちゃんが言うと同時に、さつきちゃんは玄関に、お婆ちゃんが慌てて
『さつき、ちょっと待ちなさい』って、お婆ちゃんとお爺ちゃんが、さつきちゃんを追いかけるように、玄関に、お爺ちゃんの手には、見慣れないカメラが
『お爺ちゃん、そのカメラ』って、不思議そうにさつきちゃんが言うと
『うん、これかちょっと借りてきたんだよ。さつきの晴れ姿を写そうと思って』って、お爺ちゃんが、不安そうな雰囲気で言った。何しろ、お爺ちゃん、今までカメラなんってさわったことがなかったので。
『お爺さん、ちゃんと撮ってくださいね』って、お婆ちゃんが。
お婆ちゃんにしては、珍しくきつい感じで、その絶対に失敗しないでくださいって言う強い意志が伝わってくる言い方だった。
『分かっている』って、答えたお爺ちゃんも、なんかすごく真剣で、写されるさつきちゃんも緊張
『さつき、駄目だよ』って、お婆ちゃんが
『えっ』って、さつきちゃんが言うと
『その履物、これ、これ、この草履』って、お婆ちゃんが下駄箱から、箱に入った草履を、そして
『そうそう』って言いながら、奥からバックを持ってきた。
そこまでされちゃうと、もう、さつきちゃんは完璧に舞い上がってきた。
つづく