さつきちゃんは、夢の続きの中で、ダイちゃんを捜した、そして大きな声で
『ダイちゃん』って、寝言を
その寝言に、お婆ちゃんが、反応して目を覚ました、そして
『さつき』って、声を掛けようとして、いや、起こすのは止めた。
お婆ちゃんは、、さつきちゃんが、小さい頃から、何かあったときは、ダイちゃんの夢をみていたのを知っているし、その夢の中でさつきちゃんは、ダイちゃんと話をしていて、その会話がさつきちゃんを少しづつ成長さてくれていたのを知っていたので。
そして、今日のさつきちゃんの夢が、おそらく昼間、自分と話したことだと思ったので、お婆ちゃんは、さつきちゃんを抱きながら
『ダイちゃんと、昼間の話の夢を見たのかね、泣いているんだから。生きていくのは、辛いことが多いね。でも、死んでいくのは、もっと辛いね』って、つぶやいた。
生きていくのは、辛いことが多いっていうのは、さつきちゃんにも、うん、分かる分かる、確かに辛いことや悲しいことっていっぱいあって、そこから抜け出したいって思うことが多々ある。さつきちゃんは、マイナス思考ではないけれど、楽しかったことや嬉しかったこと、要するに良いことってすぐに忘れてしまうところがあるから、これは妙にうなずける。ただし、お婆ちゃんがどう思っていたかは分からないけれど。
そして、死んでいくのは、もっと辛いっていうのは、きっとさつきちゃんが成人する前に、亡くなることが辛いっていうことだと思う。
そして、お婆ちゃんには、少しでも動ける時にしておきたいことがいっぱいあった。そのうちの一つは、自分の手でさつきちゃんの成人式の用意をしておくこと。お婆ちゃんは、普段、自分が着る着物は、縫うことは出きるけれど、振袖となると仕立ててもらわなければ、その自分が生きていてなら、仕立ててもらっていたんだけれど、もう自分にはその姿を見ることが出来ないのだから、責めて自分の手で縫って着物を着せたいって思ったらしい。それで、近所で和裁の出きる人のところに、通って縫ってくれた。ずっと、内職をしてこつこつと貯めたお金を、自分のものなんか何も買わず、いつも、カサカサになった手で内職をしていた、そうして貯めていた郵便貯金の通帳の名前が、さつきちゃんの名前だった。
お婆ちゃんは、もっともっと長生きして通帳の金額を増やして、さつきちゃんが上の学校に進学するための、お金を作っておかなくてはって貯めていたみたいだ。だから、退院するとすぐに内職を始めていた。お爺ちゃんは、最初、そんなに無理しなくても、なんとかなるからって言っていたんだけれど、お婆ちゃんが何思ってそうしているのかが分かったら、止めることが出来なかったって。だから、責めてお婆ちゃんが、内職をしやすいようにって、使いやすい台なんかを作ったりしていたんだ。
だから、お婆ちゃんにとっての辛さは、そうしたことをしておくには、時間がないという辛さだった。
つづく