さつきちゃんは、いろんなことでAちゃんってすごいんだって思っていた。たとえば、Aちゃんは、学校に行っていないんだけれど、すごく勉強が出来たんだ。

まあ、病院の中でマンツーマンって言えばマンツーマンで、勉強を教えてもらっていたんだけれど、でも、よく出来た。

そうそうAちゃんのベッドの横には、ロッカーがあってそこには当たりまえなんだけれど、傷一つついていないランドセルが入っていたんだ。

Aちゃんは、そのランドセルと指差して

『このランドセル、小学校の入学祝にってお母さんが去年持ってきてくれたんだ。ねえ、ロッカーの下を見て上履きに袋もあるんだよ。中に入っていた上履きがそれ』って、ベッドの下を指差した。

『教科書も、下においてあるのが1年生の時、今、ランドセルに入っているのが、2年生の』って言って、ランドセルを開いて見せてくれた。

その中には教科書とノート筆箱や色鉛筆にクレヨンがきれいに入っていた。確かこの時、お互いの教科書を見せ合いっこしようっていうことになって、さつきちゃんは、自分のランドセルを持ってきて、Aちゃんのベッドの上に置いて

『あっ、ごめんね。さつきのランドセル汚い』って言って、膝の上に置くと

『さつきちゃんのランドセル、いいね』って、Aちゃんが

さつきちゃんには、まだ2年しか使っていないのに、傷だらけで汚れているランドセルのどこがいいのか分からずに

『えっ、こんな汚いランドセルのどこがいいの。さつきはいつもお婆ちゃんに、このランドセルは小学校を卒業するまで使うのに、こんなに汚して傷つけてっていつも言われているよ』って、さつきちゃんが言うと

『それは、毎日ランドセルを背負って、学校に行っているからだよ。Aのランドセルは、学校に行ったことがないから、外に出たことがないから』って言って、Aちゃんは初めて、さつきちゃんに心を開いたような、なんともいいようのない切ない顔で、目にいっぱいの涙を浮かべて、それでも頑張って笑おうとして

『でもね、ほら、さつきちゃん見てこの写真』って言って、Aちゃんは、さつきちゃんに二つ折りになる写真縦に入っている写真を見せてくれた。

その写真の一枚は、椅子に座っているAちゃんを真ん中にして両サイドに、お母さんとお父さんの三人で取ったものと、もう一枚Aちゃんが一人でランドセルと背負っている写真だった。そしてこの写真を撮るために、いつもはお母さんとお父さんがバラバラで、お見舞いに来てくれるのをこの日は二人揃ってきて、Aちゃんの外出届けけを出して、三人で写真館で記念写真を撮って、初めてデパートの食堂でお子様ランチを食べたんだって、嬉しそうに話してくれた。

ただ、この食堂に心無い親子もいたんだ、Aちゃんは、話のながれでさらって話してくれたけれど、Aちゃんのことを見た子供がAちゃんのことを

『お母さん見て、あの子の足おかしいよ。開いているし、歩けないんだ』って、奇妙なものを見るように言ったら、その子のお母さんが

『駄目よ、見ちゃ、うつるから』って

この話を、しょうがないよねって、笑いながらAちゃんはさつきちゃんに話したんだ、

『Aはね、どうなん風に見られても構わないんだ。そんなことより、お父さんとお母さんと一緒に外に出れたのが嬉しくて、ただ、お母さんが可哀そうだったけど』って、悪戯っぽく舌を出した。

さつきちゃんは、Aちゃんの話しが心の中の隅から隅にしみ渡り、涙が出るっていうよりも、もの凄いパワーを貰ったような気がした。

そしてAちゃんは、

『だからね、去年は、お父さんが来るの一回減っちゃったんだ』って、明るく笑っていた。

さつきちゃんは、子供心に思った、なんか子供が生きていくのって、苦しいんだって。

『さつきちゃんも、記念の写真ある』って、Aちゃんが聞いてきた。


          つづく