基本的にさつきちゃんは、お父さんが再婚っていうのをしていたことも、それが壊れてしまったことも知らないと、大人の人から思われている。まして、お爺ちゃん、お婆ちゃんそしてお父さんも、そのことをさつきちゃんが、知っていたなんて夢にも思っていない。
そしてそのことを、さつきちゃんがどう理解していたかなんって、到底想像もつかないだろう。なにしろ、さつきちゃんは、お父さんに捨てられたって思っているんだから、ああ、違った、さつきちゃんが、お父さんを捨てたんだ。まぁ、どちらにしても、お父さんに対する信頼は、少しつづ薄れている。
何も知らないのは、さつきちゃんではなく、さつきちゃんのお父さんで、そのさつきちゃんにお父さんは、またしても再婚っていうのをしようとしている。そして再々婚の相手の人を、さつきちゃんに紹介しようとしている。
さつきちゃんは、本能的にというか、もの凄く自然に自分の世界に入っていた、その、現実から逃げたっていう方が正しいのかも。
お父さんの声が、遠くの方で聞こえている、なんかエコーが効いているみたいにファンファンっていう感じ、なんて言っているのかな?
耳を澄まさないと聞き取れない。そして、さつきちゃんは、お父さんの言葉も目の前で何か言っている女の人の言葉も、聞こうという努力をしていないので、この人たちが何を言っているのか聞こえない。
たださつきちゃんの頭の中は、この前ゆりかごで利恵ちゃんが、話してくれたことでいっぱいになっていた。
『さつきちゃんのお父さん、また再婚するの』っていうのと、そして
『兄貴にも、困ったもんだ』って言っていたという、利恵ちゃんのおじさんの言葉
そして何の前ぶれもなく、今さつきちゃんの目の前で、現実として起きているこの光景がさつきちゃんには許せなかった。
もう、新しい洋服を着て、観覧車に乗るんだっていうウキウキ気分が一転して、目の前が真っ暗になった。そして、何でこんな時にダイちゃんを連れてこなかったんだろうって、後悔がふつふつと湧いてきた。
お父さんの再々婚をしようとしている人に、会わせられるなんて、夢にも思っていなかった。あっ、ちょっとだけ何かあるなっていう気はしていた、だってお父さんが、さつきちゃんのことをどこかに連れて行ってくれるなんって、ほとんどなかったのにこんな簡単に騙されるなんて、さつきちゃんは自分のことが情けなくなった。新しい洋服なんかに、浮かれてよく考えてみると、観覧車に乗るのに、新しい洋服っていうのも変だなって、何で気が付かなかったんだって。けど、いきなりここで、それはないと思って、さつきちゃんは油断していたのだ。
だから、その女の人が、さつきちゃんに
『こんにちわ、始めまして、さつきちゃんそのお洋服、気に入ってくれたみたいね』って、その人が言った時には、微かに洋服のことをなにか言っているらしいことは、分かるんだけれど、まさかこの人からの贈り物とは、聞こえていなかった。その時にその人からの贈り物っていうことが、分からなかったのは幸いだったと思う。きっと、そうと分かったら、さつきちゃんはその場で着ていた洋服を脱いでしまったような気がしたから。
だって、さつきちゃんの性格は、真っすぐだから、なんとなくそんな風に、子供の気持ちを物で釣るなんって、許せないって思ってしまうような。そして何よりも、出かける前に、今日の流れって言うのをちゃんと、説明して欲しかった、洋服のでどこも。まあ、聞いていたら洋服にも、観覧車にも誘惑されなかったと思うけれど、そしてこの時、初めてお爺ちゃんとお婆ちゃんのことも、お父さんの仲間なのかなって、さつきのこと捨てるのかなって思った。
目の前の女の人は
『さつきちゃん、新しいお洋服が欲しかったんでしょ。そして、本当は、お母さんが欲しいんでしょ』って、言っているようで。そして、さつきちゃんの心の中は、分かるのよって。
お父さんは、一生懸命に
『さつき、おばさんにこんにちわは、ありがとうは』って言っている
つづく