お婆ちゃんは、ダイちゃんにセーターだけじゃなくて、さつきちゃんと利恵ちゃんとの約束通り、ダイちゃんと利恵ちゃんのくまさんとに、着物も作ってくれたんだ。お婆ちゃんは、なかなか器用な人だった。さつきちゃんがお婆ちゃんに
『お婆ちゃん、何でも作れるんだね』って聞いたら、嬉しそうな顔をして
『お婆ちゃんはね、お婆ちゃんのお婆ちゃんから、教わったんだよ。さつきには、お婆ちゃんが教えてあげるからね』って言った後で、ちょっと拙いことを言ってしまったっていう顔をしたように、さつきちゃんには見えた。
さつきちゃんは、お婆ちゃんが何を気にしたのか分かった、最近、そういう場面に光君ちでもあったから、さつきちゃんは、何も気が付かない振りをした。その方が、さつきちゃんは楽だったから、さつきちゃんは自分の心の中のことを聞かれるのが、嫌いだった。なんだか分からないけれど、今よりももっと小さいころから、お母さんとお父さんと三人でいたときから、何か聞かれると八割くらいしか思っていることを話さない、お話が上手く出来ないのではなくて、なんか大人に気を使ってしまっていた。
大人の顔色を見ていたわけではないと思うんだけれど、大人に自分のことを干渉されるのが嫌だったのかも。
でも、お婆ちゃんに対しては、そういうことではなくて、お婆ちゃんがさつきちゃんを悲しませないようにって思っているのと同じように、さつきちゃんもお婆ちゃんが悲しむことは、出来るだけしないんだって決めていたから。
『ふうん、お婆ちゃんのお婆ちゃんは、何でも知っていたの』って、さつきちゃんは、凄いんだって言う顔をして聞くと
『そんなに何でも知っていたんじゃないよ。きっとね。でもね、お婆ちゃんのお婆ちゃんも、さつきのお婆ちゃんも、生活の知恵っていうのがね。どうしたら、さつきを喜ばせることが出来るかなって、考えているんだよ』って、お婆ちゃんは、気を取り戻した感じで、いつものようにニコニコして、言った。
でも、お婆ちゃんは、本当はこんなことが言いたかったのでは
『さつき、お金がなくても、親がいなくても、生きていけるんだよ。お婆ちゃんとお爺ちゃんが、付いているから。人の道に外れないで、ちゃんと生きていけるように、お婆ちゃんがお爺ちゃんが、しっかりと教えてあげるから』とでも、
まあ、その時のさつきちゃんは、そんなことを思えるはずはなく
『さつき、いつも、喜んでいるよ』って、
『そうかい、じゃ、お婆ちゃんはさつきに、肩をたたいてもらえたら、嬉しいんだけれど』って、そうな会話をしていたと思う。
『任せて、さつき、肩たたくの上手いいんだよ。お爺ちゃんが誉めてくれたもの』って言いながら、小さな手をグーにして、時々どこで見たのかで肘なんかで、一生懸命にぐいぐいって、子供っておかしい。
さつきちゃんが子供のころって、まあ、どこの家もそんなに裕福っていう感じではなかった。だから、いろんな意味で良かったのかな、たとえば、繕ったものを身に着けていても。誰も何も言わなかったから。繕った靴下なんか当たりまえだったし、ひじや膝なんかも、ああ、お尻も。お婆ちゃんは、繕い物をしながら
『可愛いく、繕ってやるよ。さつき、どんな風にしようか』って、よく聞いてくれた。
だから、さつきちゃんの繕った靴下も、ズボンもセーターもシャツも、以外に可愛かった。なんか、より集めの半端な布なんかなんだけれど、お婆ちゃんの心遣いがいっぱい詰め込まれている感じで、結構さつきちゃんは好きだった。
今とは世の中が、随分違う。
つづく