ダイちゃんがさつきちゃんのところに来た暮れに、さつきちゃんが始めてお爺ちゃんちで、新しい年を迎えることになる。

さつきちゃんが生まれ育った町は、冬になると雪に埋もれてしまうので、さつきちゃんにとってダイちゃんの存在は、凄く大きかった。

いくら、子供は風の子なんって言っても、さつきちゃんの住む町では、なかなかそうも行かなくなってくる。冬の間は、家の中で遊ぶことが多くなってしまう。

勿論、雪合戦やスキーやそりなんかでも遊ぶけれどね。何しろ、さつきちゃんはまだ4歳、これから5歳になるわけだから、お婆ちゃんは、少し心配なので出来るだけ家にいって欲しい。軒下なんかで遊んでいて屋根から落ちてきた雪の下敷きなんかになったら、大変なので。いくら、危ないからと言っていてもそこは子供だ、すぐに忘れて遊びに夢中になってしまう、ずっと自分が付いていられるといいんだけれど、そうもいかない。そう、お婆ちゃんは内職を、しなければいけないから。

そんな時のダイちゃんの出現は、お婆ちゃんにしてみると、お米を当てるよりも良かったって、徐々に徐々に強く思えた。

ダイちゃんを抱きながら、内職をしているお婆ちゃんの背中に、自分の背中をもたれさせながら、さつきちゃんは思いついたお話を、次から次とお婆ちゃんとダイちゃんにしてあげる。

さつきちゃんの話に付き合っているお婆ちゃんも大変だ、いい加減に聞いているとさつきちゃんに

『お婆ちゃん、ちゃんとさつきのお話、聞いている。ねぇねぇ』って

『聞いているよ』って、そして適当なことで合図ちなんかも入れなくてはならない。お婆ちゃんは、それでも内職の手を休めずに、ニコニコしながらさつきちゃんに付き合ってくれているのが、さつきちゃんの背中にも伝わってくる。

寒くて温かい一日、そんな日が冬の間、何日も続く。その間に、近所の子たちが

『さつきちゃん、雪合戦するよ』とか

『かるたをするから、僕んちにおいで』とか

『トランプをするよ、さつきちゃん、おいで』とか

外での雪合戦は、お婆ちゃんが

『屋根の雪には、気をつけるんだよ。濡れて寒くなったら、すぐに帰って来るんだよ』っていう、注意を

そして、家においでって呼びに来てくれる子の所には、何回かに一回は手ぶらではっていうことで、お婆ちゃんはお勝手でごそごそして、

『何にもないね。しょうがない、さつき、このお新香を持ってお行き、このお新香は、お婆ちゃんが漬けたんでよって言うんだよ、分かったかい』そう言って持たせてくれる。

何故かって言うと、遊びに行くとそこの家のおばさんが、お菓子なんかを出してくれる、出されたさつきちゃんは、

『いただきます。美味しい』って、いただくわけで残ったのを、帰るときに

『さつきちゃん、どうぞ』って、言われると

『おばさん、ありがとう』って、素直にいただいてくる。

さつきちゃんはどういうわけか、よく物を貰うことがあった。さつきちゃんは、お婆ちゃんといつも一緒に、お使いに行くんだけれど、そうするとお店の人が、何かくれたりした。そのころって、お菓子なんか量り売りだったので、ケースから一つ出して

『はいよ』っていう感じで、貰っていたように記憶している。もしかしたら、さつきちゃんは、調子のいい子だったのかな。

お店で貰うのは別にして、お婆ちゃんにして見ると、孫がお世話になってっていう気持ちと、きっと引け目を感じさせないようにっていう気持ちがあって、家で作ったものをさつきちゃんに、もたせていたんだと思う。だって、さつきちゃんのおやつの定番は、かぼちゃやジャガイモのふかしたの、これはお婆ちゃんが畑で作っていたものだし、少し手を加えて、自家製の羊かん。

とにかく、さつきちゃんは、そんなお婆ちゃんの気持ちなんかを分かるはずもなく、元気にダイちゃんを抱えて

『うん、分かった。行って来るね』

『お行儀よくするんだよ。遅くならないように、帰ってくるんだよ』って言う、お婆ちゃんの言葉を背中に聞きながら、近所の遊び仲間の家に行ってしまう、ある冬の一日。

でも、なにより嬉しい誘いは、お婆ちゃんの

『さつき、内職のお金が入ったから、お弁当を持って、映画に行くよ』って、

お婆ちゃんって、何が幸せだったのかな?


           つづく