早い話、さつきちゃんがもの思いに耽ったりしなければ、何の問題も無いんだけれど、どういう訳か、さつきちゃんは想像力が豊か?なのか、一つのものから、色んなことを想像して、勝手にお話しを作ってしまうことが大好き子だったんだ。

そして、そのお話しの聞き役立ったのが、お母さんに壊されて捨てられてしまった、あのお人形だった。

あのお人形がさつきちゃんの中で、占めていた部分って凄く大きかったんだ。

そんなに大事なお人形だったのに、大好きなお人形だったのにどうして、お人形のことを嫌いってなってしまったって言ったのかな。

きっと、さつきちゃんがお人形が欲しいって言ったら、お爺ちゃんたちは、何とかすぐにじゃなくても、そんなに立派なものでなくても、なんとかしてくれたと思うんだけれど、さつきちゃんはそうは言わなくて、嫌いって言ってしまった。

さつきちゃんは、今でも、なんで、

『嫌いだから、さつき、お人形は、だからいいの』なんて言っちゃったのか、ずっと心に引っかかっている。きっと、なんだか分からないけれど、勢いっていうのが言わせたっていうか、でも、このことでお雛様のことは、なんとなく誰も困らなくてすんだから、良かったこともあった。

だって、次の年のお雛様の時、お爺ちゃんもお婆ちゃんも、さつきのお雛様はどうしましょうって、悩まなくてもすんだから。そういうのって、きっとどこかで繋がっていて、こんがらからなければ、みんなが上手くいくんだ。

そう、上手くいっていたから、この年の暮れの福引で、お婆ちゃんが猫のぬいぐるみのダイちゃんを当ててくれたんだ。

あの時の、お婆ちゃんとさつきちゃんは、二人ともクリスチャンでもないのに、胸で十字を切って両手を合わせて

『神様、仏様、どうぞ、お婆ちゃんがあの猫のぬいぐるみを、当てますように。お願いします』って、神様と仏様にお願いをした。

他の福引をする人たちは、1等とか2等とか商品がもっと実用的なものだったように記憶している。そう、お米なんかあったような気がする。なんか日本酒とか、子供的に欲しいっていうのは、猫のぬいぐるみのダイちゃんしかなかったし、さつきちゃんはどうしてもそのダイちゃんが、欲しくてたまらなくなってしまった。そうそう、ダイちゃんっていうのは、さつきちゃんが付けたぬいぐるみの名前で、よくぬいぐるみに初めから付いている名前ではないんだ。

そして、お婆ちゃんはやったんだ、ダイちゃんを当てたんだ。その時のさつきちゃんの喜びようは、それはそれは凄かった。

ただ、その当時のお婆ちゃんのお財布の中身っていうか、日常生活のことを考えると、本当はお婆ちゃんはお米を当てたかったのでは、これはダイちゃんがいなくても何とかやっていけるようになってから、さつきちゃんが思ったことなんだけれど。

ダイちゃんを福引の係りのおじさんから、

『はい、さつきちゃん、この猫のぬいぐるみは、今日からさつきちゃんのぬいぐるみだよ』って、手渡された時は目茶苦茶嬉しくて、大きな声で

『ありがとう』って、お婆ちゃんと福引の係りのおじさんに言った。

小さな町内の商店街なので、福引の係りをしていたおじさんとも、そのころには顔見知りになっていたので、おじさんも喜んでくれた。

その夜、お爺ちゃんが仕事から帰宅した時にも、一生懸命に福引のときの様子を、しつこいくらいにお爺ちゃんに説明をした。

そして、この日から、それまではお婆ちゃんと二人で寝ていたのが、ここにダイちゃんも加わることになる。

そして、この日から、さつきちゃんの一人の世界にお友達ができた。


          つづく