空君が、円陣を組んでいる僕らを見回して
『ひもを解くよ。いい』って、
『うん、いいよ。中の猫のモンスターが、どんな風になっているか分からないから、みんな驚いたりしないで、何が起きてもいいように、心構えは宜しくね』って、僕
『分かった』『分かったよ』『任せて』『じゃあ、一、二の三』ひもを解いて、ダンボーを開ける。ダンボールを取り囲んでいた五つの顔、そして十の目に飛び込んできた猫のモンスターは、粉になっていた。それは、骨を通り越して、さらさらの粉に、風が吹いたらすっと飛んで行く粉に。
『僕が銜えていたときは、箱の中で固まりって言うか、猫のモンスターが揺れていたのを感じていたよ。粉なんかじゃなかったと思う。僕は、星のお墓に猫のモンスターを連れてきたら、何か分かるんじゃないかと思っていたのに。粉になってしまったら、それに僕、元に戻せるのなら猫のモンスターを、ただの気の弱い猫に戻したかった』って、僕が言うと
『元ちゃん、これってさ、モンスターの仕業かな。この猫から、レッドポイズンのことが何か漏れないようにって。でも、粉にすることはないだろうに』って、リッちゃんが
『モンスターの仕業にしても酷すぎる。取り合えず、空君、ダンボールを元にひもで結んで封をして、中の粉が飛ばされないように。この粉に、何か仕掛けがあったら大変だから』って、僕
『分かった』って、空君が箱を閉じてひもで結ぼうとすると、なかなか箱を閉じることが出来ない。何か力が加わっているみたいに、反発している。
『なんか、変だよ、閉じない。凄い力で、抵抗している。みんなも、力を貸して』って空君が、真っ赤な顔をして言う。僕らも、二本足で立つような格好になりながら、肉球に神経を集中させて、ダンボールの箱が閉まるように押す。
『ねぇ、ダンボールって紙なんでしょう。これ、紙じゃないよ』って、愛ちゃんが言う。
『元ちゃん、もしかしたらこのダンボールの箱とひもって、これも罠』って、リッちゃんが
『ありうるかも、よく考えるとタイミングが良すぎた、何か入れ物が欲しいって思っていたら、何か結ぶものが欲しいって思っていたら、僕の目の前に箱もひもも勝手に現れて結べたんだ。僕の手では無理なのに』って、僕が言うと、空君が
『あのさ、もしかして、ダンボールの箱も中の粉も無くなっちゃってもいい。僕、レスキューの本部から、こんなの持ってきたんだけれど、かけてもいいかな』って言いながら、ポケットの中からどくだみのお茶を出した。
『ここのままは不味いし、もう猫のモンスターを元に戻すことも出来ないし、お茶をかけてどうなるか分からないけれど、中の粉が飛ばされることはないだろうから、やってみようか』って、僕
『きっと、ここの場所でなら、ママやマザーそれに天界のみんなが、守っていてくれるから、何とかなるかも』って、アッちゃんが
『この際、解けてなくなったとしても、仕様がないよ。粉になってしまった、猫は可哀そうだけれど』って、リッちゃん
『この猫さんに、家族はいなかったのかしら。この猫さんは、雄の猫さんだからお父さんなんだよね。きっと、子供はお父さんの子と捜しているよ、みんなのお父さんは帰ってきたのに』って言うと愛ちゃんは、ワーって大きな声で泣き始めてしまった。目からは、大粒の涙がぼとぼとと、ダンボールの中の粉に落ちていく。じっと涙が落ちていくのを見ていると、なんだか粉は愛ちゃんの涙を一生懸命に吸収しているように見えた。そして、涙が一滴一滴落ちるごとに形が変化していき、いつの間にかゼリー状になって、そのゼリー状の形があの気の弱そうなおどおどしていた猫の形になってきた。そうなってきたら、もう愛ちゃんの目からは、涙は出てこなくなって
『あっ、猫さんになっていくよ。猫さんだよ』って、愛ちゃんの声は踊っている。
あの猫の形にはなったんだけれど、それは形だけで生きているわけではない。こうなると、何とかこの猫を生き返らせたくなってくる、みんなの顔にもそう書いてある。空君が、そっと箱の中から猫を取り出す、その猫は今にも動き出しそうには見えるけれど、でも冷たい。
僕ら、三匹と二人の頭には、一つのことが浮かんだ、そして全員が同時に同じものに手をかけた。
続きはまた![]()