『サブさん、大丈夫。港は、こっちでいいんだよね。あそこかな、廃校になった小学校って』って、僕が聞くと

『うん、あそこで間違いないよ。元気さん、僕は何をするといいんですか』

『その何って言われると、どう説明するといいかな。ほら、今もそうだってけれど、僕のこと見える猫さんは、あの小屋にはサブさんと夢ちゃんしか居なかったでしょ。多分、小学校に居る猫さんたちにも、僕の姿が見える猫さんは居ないと思うんだ。そうすると、説明する時間が勿体ないのと、いつモンスターが現れるのか分からないし、それに隊長さんの部下の人たちも調べに来るから、その前に猫さんたちを移動させたいんだ。僕がサブさんの手伝いをするから、みんなを上手く移動させよう』

『元気さんが、僕の手伝いですか』

『そう。サブさんが知っている猫さんもいるんでしょ』

『いるけど、ボス猫の公園にいた猫たちとは、正直言うと仲が悪いんだ。夢ちゃんを虐めていたし、今はそんなこと言っている時じゃないのは分かっているけど、それと他の猫さんたちは、せいぜいすれ違ったことがある程度かな、そんなんで平気』

『平気、姿が見えているんだから。そうだな、学校だから机なんかが置いてあると思うんだけど、それをサブさんが手を触れずに動かして見せるとか言うんだ、実際は僕が動かすから、それでみんなにサブさんは、普通の猫さんとは違うんだって、だから、この猫さんの言うことを聞いたほうが安全なんだって思わせたいんだ。それで、みんなを移動させるんだ、このやり方は決して良いとは思えないんだけれど、時間がないから一人一人を説得していては、モンスターが餌を持ってくるのとぶつかってしまう。強制的に移動させられないんだ、猫さんたちが意識がなかったりしたら出来るんだけれど、そうじゃないと駄目なんだ。嘘をつかせて悪いんだけれど、でもサブさんだって、物は移動できなくても普通の猫さんとは違うよ、僕らとこうして話をしたり、僕らと一緒にいるんだから』って、僕が言うと

『フフ、そんなに言わなくても、僕大人だから元気さんの言いたいこと分かりますよ。元気さん、それよりしっかり前を見ていて僕怖いです』

『着いた、サブさん。まず、一箇所に猫さんたちを集めましょう。ここは、二階だから一階の方がいいでしょう、逃げるには。さぁ、行こう』って言って、僕とサブさんは一階に、そこで猫さんたちを、集めやすい場所を探す。

『元気さん、ここなんかどうでしょう。ここ、図書室だったんだ』

『あっ、この本、レッドポイズンの載っている本だ』って、僕が独り言を言っていると、サブさんは

『ギャオー、ニャオー、ニャオー、ニャオー』って、建物中に響くような声で雄たけびを上げた。サブさんの雄たけびに静まり返っていた校内に、猫さんたちの慎重なかさこそと言う足音が、少しづつこの図書室に近づいてきている。

図書室の外で猫さんたちが、話をしているのが聞こえる。

『今の雄たけびを聞いたか。誰の雄たけびだ』って、一匹の猫さん

『自分、以前にさっきの雄たけびを聞いたことがあります。確か、この前のカラスやハトの事件があった公園のリーダーの雄たけびです』って、まだ若い猫さん

『えっ、あそこの公園のリーダーだって、若いくせに少し生意気な奴だ』って、中年の猫さんが、言うと

『そうそう、犬とも仲がいいんだ。おかしな奴さ』って、訳知り顔の猫さん

ぞろぞろと、廊下に猫さんたちが集まってきている。ただし、まだ一匹も図書室には入ってきていない。

『そんなところに居ないで、中に入って僕の話を聞いて欲しい』って、サブさん

『大事な話だ、時間がないんだ、ここは危険なんだ』って、サブさんが続ける

『危険、ここが。ここは、良い所さ、雨風が防げて、決まった時間になると餌を持ってきてくれる人間がいて、こんな良い所はないさ。お前、確かサブって言うんだよな。ここを乗っ取ろうとしているんだろう』って、中年の猫さん

『ここは、雨風が防げて、餌に不自由しないかもしれないけれど、落ち着いてよく思い出して、仲間が時々人間に連れて行かれているだろう。そして、誰も帰ってきていないだろう。ここは、危険なんだよ』って、サブさん

『ああ、確かに餌を持ってきてくれる人間に、連れて行かれた仲間は居るけれど、みんな飼い主が見つかって、飼い猫になったんだ』って、若い猫さん

『飼い主を見つけるんだったら、公の場所でそう公園とか人間が集まるところで、みんなを見せて飼い主を捜すさ。それに、本当に飼い主を捜してくれているんだったら、みんなに予防注射をしたり、去勢手術したりしているはずだ』って、サブさんが言うとみんな、暗い顔をして下向いている。

『みんな、薄々不安を感じているんだろ。駄目だよ、ここに居たら、命を大切にしようよ』って、サブさんが自分の思いをみんなにぶつけた。


               続きはまた天使