夢ちゃんには、動いている猫じゃらしは見えるけれど、それが何故なのかわからず、きょとんとしている。そう、夢ちゃんには、僕らの姿も、声も聞こえないんだから。
僕は、愛ちゃんを近くのベンチにすわらせて、
『愛ちゃん、夢ちゃんを抱っこしてあげて、そうしたらきっと、愛ちゃんの姿も僕らの姿も声も、夢ちゃんが見ることも聞くことも出来ると思うよ。夢ちゃん、猫じゃらしのところに行って、愛ちゃんが夢ちゃんを抱っこするからって、サブさん、夢ちゃんに伝えて』って、僕がサブさんに言う
サブさんは、夢ちゃんを愛ちゃんが座っているベンチまで連れて行き、夢ちゃんに
『ここに、愛ちゃんがいるんだよ。これから夢ちゃんを抱っこしてくれるよ。そうすると、今は僕しか、元気さん達の姿や声が聞こえていないけれど、夢ちゃんにも見えて、声も聞こえるようになるから。愛ちゃんが夢ちゃんと話をしたいんだって。怖がらなくても大丈夫だから』って、サブさんが
『うん、私、怖くないよ。ただ、いろんなことにびっくりしただけ。愛ちゃん、愛ちゃんは人間なのよね、空君も。私のことを虐待したり、石を投げつけたり、花火で脅かしたり、自転車やバイクや車で追いかけたり、轢いたり、そんなことはしない人たちなのよね』って、夢ちゃんが
夢ちゃんの、その言葉に僕らは、氷ついてしまった。これから、愛ちゃんが聞こうとしていることが、今の言葉に全て含まれているような、胸が痛くなるような言葉だった。
愛ちゃんは、そおっと優しく夢ちゃんを自分の膝の上に、そして夢ちゃんの頭を撫でた、そして、自分のおでこと夢ちゃんのおでこをくっつけて
『そんなに震えないで、夢ちゃん。肩の力を抜いて、深呼吸をして、落ち着いてきた。愛ちゃんの顔が見える、声が聞こえる』って、
『うん、分かった、分かったけれど、私、人間が怖いの、ごめんね。愛ちゃんの顔も見えているし、声も聞こえているよ。みんなのことも見えている。なんだか、魔法の国に来た見たい』って、夢ちゃん
『それで、愛ちゃんは、私に何を聞きたいの』って、夢ちゃん
『本当は、こんな時じゃない方がいいのかもしれないけれど、愛ちゃん、駄目なの気になりだすと。愛ちゃんのなかには、次がないの、地上の住民だったころのせいかもしれない。そう、知りたいのはね、どうして夢ちゃんは、女の子なのに赤色が嫌いなの。女の子って、赤とかピンクとか好きな子が多いでしょ、なのに夢ちゃんは赤が嫌いって、夢ちゃんの顔が歪んで、すごく悲しそうで、苦しそうで愛ちゃんもみんなも気になってしまった。もし、夢ちゃんが話したくなければ、無理に話してくれなくてもいいの。みんな、話したくないことってあるから、思い出したくないことも、心の奥にしまっておきたいこともね』って、愛ちゃん
『でも、話をしたら、夢ちゃんが抱えている重さが、少しは軽くなるかもしれない。あれ、夢ちゃん、もしかしたら夢ちゃん、右の目が見えていないよね』って、愛ちゃん
『ううう』って、夢ちゃんが嗚咽を、愛ちゃんは優しく、夢ちゃんの背中をさすりながら
『夢ちゃん、恥ずかしくなんかないんだよ。大きな声で、泣いてもかまわないんだよ』って、
『ありがとう、優しいのね、愛ちゃん』って、夢ちゃんは、言って愛ちゃんの胸に顔をうずめて、泣いた。
『えっ、夢ちゃん、右目が見えなかったの。僕、ずっと一緒にいて気が付かなかった』って、サブさん
『サブさんに、隠していたわけじゃないと思うよ。夢ちゃん、思い出したくなかったんだと思う、それを愛ちゃんが聞いたりしたから』って、愛ちゃん
僕とアッちゃんとりっちゃんと空君は、愛ちゃんと夢ちゃんを囲むように座ってじっとしている。サブさんは、夢ちゃんを抱っこしてベンチに腰掛けている愛ちゃんの隣にお座りしている。
夢ちゃんは、肩で息をしながら呼吸を整えている。サブさんは、心配そうにじっと夢ちゃんを見ている。
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