岸では、実君のお父さんとお母さんが心配そうに、こちらを見ている。

『温かそうな、お父さんとお母さんだね。仲良しに見えるのに、喧嘩なんかしそうに見えないのに』って、愛ちゃん

『大人のことは、僕らには分からないんだよ。僕んちのお父さんとお母さんもそうだったから、僕やお姉ちゃんは、そんな時あーあ、また喧嘩している、お腹空いたとか平気で言っていたけど、実君の場合は、少しわけが違うから、どこかでお父さんとお母さんに気を使っていたんだよ。どんなに良くされていても、実君のどこかに遠慮があったんだと思うよ。僕ら子供だって、いろんなこと感じるのは大人と変わらないのも。もしかすると、子供のほうがいっぱい感じているのかも、ただ子供は大人の力がないと生きていけないから、時々自分一人では解決できないような、重い荷物を背負う時があると思う、僕』って、空君が心の中に力ちゃんのことを思い出しながら

『そうだね、そんなとき血の繋がりって出てくるのかも、でも、もう、実君ちは、大丈夫だよ。今度のことで、亡くなった実君のお母さんに頼まれた父と子ではなくて、本当に自分達が望んだ父と子に、お母さんとは母と子に、そしてお父さん、お母さん、実君で家族になったと思うよ。お互いに遠慮なんかしない』って、僕の言葉が終るか終らない時、実君、信長さん、小町ちゃんはレスキューの人たちに囲まれながら、岸に近づいて来た。お父さんとお母さんは雨に濡れることも忘れて傘を放り出して、実君たちが岸まで来るのが待ちきれずに、駆け出していった。

お父さんは、実君が無事に帰ってきたら、おもいきり殴ってやろう、こんなに心配させて、何かあったら亡くなった実君のお母さんに、なんて報告したらいいんだ、この親不孝者って思っていたのが

『お父さん、お母さん』って、泣きながら叫んで走ってくる、実君を見たら、頭の中がただただ安堵と嬉しさだけで、大きく両手を広げて、その中に飛び込ん出来た実君を、なにも言わずに力いっぱい抱きしめていた。その中にお母さんも、そして信長さんに小町ちゃんも。

実君たち親子と信長さんと小町ちゃんは、警察の車で家まで送ってもらった。はじめ、実君を病院に連れて行き、何か問題がないか検査をしましょうと言われたんだけれど、実君が

『僕、どこもなんともないです。早く、家に帰ってお風呂に入りたいです』って言う一言で、今日はこれで家に送りますが、後日、簡単な聞き取りをしますということになった。

送ってもらう車の中で、すぐに実君も小町ちゃんも眠ってしまった、疲れていたんだろう。信長さんは眠いのを我慢しながら、お父さんとお母さんの話に、聞き耳を立てていた。まぁ、二人の会話はありきたりに

『無事で、本当に良かった。私、本当はどうしてこんなことをしたのって、叱るつもりでいたんだけれど、この子のお母さんって言う声を聞いたら、そんなことすっ飛んでいたわ。嬉しくて嬉しくて、でも、不思議でしたね、あのトンネルみたいな雨と風』って、お母さんが言うと、お父さんも

『僕も、同じことを思っていたよ。大勢の人に迷惑を掛けてって、こんなに心配をかけてってね。顔を見て声を聞いたら、いつの間にか抱いていた、ハハハ。うん、そうだよなぁ、あのトンネルみたいな雨の降り方はなんだったんだろう。あそこだけ、雨も風も、不思議だ。信長、お前、なんか知っていないのか。お前じゃ、なんか知っていても、話が出来ないからな。信長も疲れただろう、実に付き合わされてありがとなぁ、お前が一緒だとお父さんもお母さんも安心だよ。これからも、頼んだぞ』って、言いながら信長さんのことを、膝の上に抱いて頭や体を撫でていた。信長さんは、お返しにお父さんの顔を舐めながら、心の中で

『気にしないで、僕と小町は、いつも実と一緒だから、気にしないで。そんなことより、お父さんもお母さんも、喧嘩なんかしないで、実、結構ナイーブなんだから。それとトンネルは、元気さんたちがって言っても、信じてもらえないか、でもね』って、お父さんとお母さんに通じるといいなった思っていた。


              続きはまた天使