自分の夢の中に入ったときには、もうリッちゃんは起きる時間になっていた。リッちゃん一人を起こすのが、気が引けたのでみんな起きることにした。加奈ちゃんは、慣れないせいもあって少しドギマギしているみたいだ。
愛ちゃんは、加奈ちゃんに興味心身だ。年の近い女の子だ、愛ちゃんは空君しか知らないから、仕様がないといえば仕様がないのかな。いつもは、リッちゃんが愛ちゃんの餌食になっているんだ。
加奈ちゃんは、愛ちゃんが妹みたいに可愛いらしく、お姉さんぽい感じで
『愛ちゃん、加奈が愛ちゃんの髪といてあげるから、こっちに来て』なんて言いながら、愛ちゃんの髪をポニーテールに結び、お下げにしていた自分の髪を解き、片方の髪飾りを愛ちゃんにつけてくれた。その時の愛ちゃんの喜びようは、言うまでもなく嬉々として、僕らの周りを
『可愛い、愛ちゃん、似合っている』って、そう、僕らはみんな男の子だから、愛ちゃんの髪のことなんて誰も思いもしなかったことだ。これからは、空君の仕事だって、僕、アッちゃん、リッちゃんは、空君のほうを見た、だって、どう考えても、僕らには無理![]()
『ねぇ、加奈ちゃん、加奈ちゃんとお母さんだけの秘密なんかない。秘密じゃなくても、加奈ちゃんだよって言うのが分かるようなこと。たとえば、いつも加奈ちゃんがお母さんと一緒に歌っていた歌とか、ないかな』って、僕が聞くと、加奈ちゃんは
『歌、なんかあったかな、えーと、あっ、そうだ。いつも、加奈とお兄ちゃんとで歌っていたのでもいい』って
『うん、加奈ちゃんって、分かるのだったら、大丈夫だと思う』って、僕
『加奈とお兄ちゃんとでいつも、アルプスの少女ハイジおしえてを歌っていたの、って言っても、
おしえて おじいさん
おしえて おじいさん
おしえて アルムのもみの木
ここだけなの、それもそのときの気分で、替え歌にして』って、加奈ちゃんが
『それなら、絶対におばさんに伝わるよ』って、空君が
『そうだよ、それで一度、加奈ちゃんに挑戦してもらおう。早速、今夜の夢でお母さんの扉をたたいてみて』って、アッちゃんが、うん、うんって、満足げに
『加奈、頑張ってみる。何とか、お母さんの誤解を解かないと、お兄ちゃんが可哀そうだもの。きっと、空君とのときと同じで、加奈との事故も轢き逃げした人より、加奈たちの方が悪かったってことになったんだと思う。ちゃんと調べてくれたらって思うけれど、とにかくお母さんには、お兄ちゃんのことだけはちゃんと伝えなければ、お兄ちゃんは、自分で加奈のことを庇ったなんて決して言ったりしないから。お母さんだって、お兄ちゃんはいつも加奈のことを庇ってくれているって知っているのに。空君との事故の後、お兄ちゃんは神経質なくらいに、車に気をつけていたのを、お母さんだって知っていたのに。特に、あそこの横断歩道は、青でもお兄ちゃんは急いで渡っていた。すごく、怖かったみたい。加奈と繋いでいた手が、いつも横断歩道になると、汗をかいていたから。お兄ちゃん、本当に可哀そうなんだよ。事故を起こした人は、逃げちゃった人は、どんなことを思っているのか分からないけれど、被害にあって一人だけ助かった子の心が、どれくらい傷ついているかなんて分からないと思うの。加奈や空君のように、亡くなった子の悔しさとは違うし。それに、加奈の場合は蝋燭の炎が炎だったから、誰も恨んではいないんだ、ただ、お兄ちゃんには、本当に悪くて。加奈、お兄ちゃんに言ったんだよ。お母さんに言ってって、でも、お兄ちゃんは、いいんだって言って、一人で苦しんでいるし。お父さんは、事故以来いつも逃げているし、加奈が、頑張るしかないんだね、我が家は』って言った加奈ちゃんの目は、キラキラと輝いていた。
そんな中、ママやマザーに、まだまだ地上で頑張るようにって励まされたリッちゃんは、お父さんと朝の散歩に出かける。そう、寝不足に鞭打って、階段はお父さんに抱っこされて、
『よっ
25キロ、ガンバレ』と、僕たちは声を掛け、後に続く。
続きはまた![]()