僕らは、勝手に色々と言いながら、力ちゃんの隣まで来た。
力ちゃんは、隣に空君や僕たちがいるなんて知らずに
『空、加奈、また明日、お休み』って言い残して、家の方に向かって歩き始めた。
僕たちも、なんだか尾行しているみたいで、気が引けたんだけれど、力ちゃんの後をついて行く。
空君は、首をかしげながら、何か考えている。
空君には、懐かしい町並みだ、考え事はさておき、
『随分と、変わったな、この辺。こんなにマンションなんか、建っていなかったのに。それに、こんな時間にゴミなんか、出したりする家はなかったのに。小学生だって、塾の帰りかもしれないけれど、コンビニで買い食いなんかしていなかった。なんだ、子供がタバコ吸っている、あんなに堂々と』って、空君、かなり怒っている。タバコを吸っている子に、軽く蹴りを入れた、蹴られた子は少しバランスを崩し、周りを見回しても誰もいないので、不思議そうな顔をして慌てて走り去っていった。それを見ていた愛ちゃんが
『クスクス』と笑っている。そして、キョロキョロしながらゴミを捨てに来た人の後ろを、捨てたゴミ袋を愛ちゃんが持ってその人の家までついて行った。愛ちゃんは脅かすつもりはなかったらしいけれど、その人にしてみると、驚いたというか、ショックでしばし口をパクパクさせていた。あの人は、もう何があってもルールを破ったりしないだろう。そんな寄り道をしながら、僕らは力ちゃんの家に着いた。
空君が知っている、力ちゃんなら家に帰ったら、必ずお母さんに
『ただいま』って、言っているはずなのに何も言わずに自分の部屋に入ってしまった。15歳にもなると、変わるのかななんて思ったりもした。
でも、空君が知っている、力ちゃんのお母さんなら、何も言わずに部屋に入ってしまった力ちゃんに対して、
『力、家に帰ってきたら、ただいまくらいちゃんと言いなさい。ご飯はどうするの、早くしなさい、手を洗って。学校で何かあったの、そんな顔して、どうした』って、こんな感じのお母さんなのに、留守なのかな。
それと、力ちゃんには妹がいた、2歳下で二人とも仲が良かった。あーぁ、加奈ちゃんなんだけれど・・・
『ねぇ、リビングをちょっと覗いていいかな、なんだか、力ちゃんち変だよ。僕が知っている力ちゃんちって、こんな暗い感じじゃなかった。すごく明るくて、なんて言うか、みんなにウエルカムって感じで、力ちゃんがいなくても友達がいたんだ。えーと、お母さんが仕事をしている子に、一人で家に居るんだったらおばさんの家にいなさいって言って。僕とお姉ちゃんも何度か、お母さんが出かけた時、力ちゃんちで夕飯をご馳走になったことがあったもの』って、空君が
『そうだね、もう力ちゃんは自分部屋に居るんだから、リビングに行ってみよう』って、僕
『ねぇ、ここの家に入った時、感じたんだけれど、お線香の匂いがするの気がついた』って、リッちゃんが
『そうだね、する、お線香の匂い』って、みんな
『誰か、亡くなったのかな』って、空君は言いながら胸がドキドキしてきた。
リビングには、明かりは点いていたけれど誰もいなくて、隣の和室に力ちゃんのお母さんが一人、仏壇の前に座っていた。
最初に和室に入って行った愛ちゃんが、写真を見て
『女の子の写真』って、
『えっ、加奈ちゃん
何で、加奈ちゃん、やっぱり、加奈ちゃん、嫌な予感が当たってしまった』って、空君
『暗い原因は、どうやらここら辺にあるのかな』って、かなり冷静にアッちゃんが
チャイムがなってドアの開く音がした、きっとおじさんが帰ってきたんだろう。でも、おばさんはピクリともしない。チャイムの音は、決して低くない、聞こえないはずがないのに。
やっぱり、おじさんだ
『また、ここでそうしているのか。部屋の明かりが点いていないけれど、力は帰っているのか』って、おじさんが聞くと、おばさんはその答えなのかどうか分からないけれど、
『もう、そんな時間、食事の用意をします』って、すくっと立ち上がりキッチンへ
その後姿を、じっと見ながらおじさんは、苦痛に満ちた顔をして
『一体これからどうしたらいいんだ、何でこんなことになってしまったんだ。加奈さえ、生きていたら』って言いながら、頭を抱えて畳の上に座り込んでしまった。
僕が亡くなってからの8年で、この家にはいったい何が起きたんだろう。
どうやら良いことでないことだけは、確かだ。
続きはまた![]()