『どうして育てるのが嫌になったの。そして、誰がおばさんの愛ちゃんを育てていたの』って、意地悪な質問を空君がした。愛ちゃんのお母さんは、その質問にちゃんと答えようと、どこから話すといいのか考えているように見えた。そして、重い口をあけて

『空君は、おばさんの話を聞いてくれるの。とても酷い話よ、子育てを放棄した母親の話だもの。自分勝手な、エゴイストな話よ』って言った。

『うん、構わないよ。おばさん、きっと話をすると楽になるかもしれないよ。それに、愛ちゃんに、おばさんの気持ちが伝わるかもしれない』って空君が言うと、愛ちゃんのお母さんは、少し微笑んで

『ありがとう、空君は優しいのね』って言った。

『私は、愛ちゃんが自分のお腹の中にいるとき、殺そうとしたことがあるの、でも愛ちゃんはどんどん育っていて、それは無理だったの。愛ちゃんには父親がいないの、そのころのおばさんは、ここの家にいるのが嫌で、家出をしたりして、そうね、悪い子だったの。そして、愛ちゃんを生んで、愛ちゃんを一人この家に残してまた家出をしたの。愛ちゃんを生むときは、大変だったの、それまで一度しか病院に行っていなかったから、本当は検診って言うのに行っていなければいけないのに。愛ちゃんがどんな状態で、おばさんのお腹の中にいるのか分からず、愛ちゃんはそこでも一度死にそうになっていたの。とにかく、おばさんには親になるという自覚が全く無かったの、きっと普通の人なら、生まれた赤ちゃんを抱いた瞬間、見た瞬間にこの子を守っていかなくてわって思うんでしょうけれど、おばさんにはそういう気持ちも無かったの。そして、愛ちゃんにとって不幸なことは、おばさんの両親もその頃、酷い状態だったの。おばさんのお父さんが他所に女の人を作って、家に帰ってこなかったり、帰ってきても喧嘩をしたりで、おばさんのお母さんも荒れていて愛ちゃんの面倒を見てはくれなかったの。おばさんには一人弟がいたんだけれど、その子も愛ちゃんの面倒を見てはくれなかった。おばさんは、なんでも人に押し付けていたのよ、そして何でも人のせいにしていた。最低なの、母親としても、人間としても、ただ、自分の手元に愛ちゃんをおいておかなかったから、おばさんは、愛ちゃんに手を上げることが無かったんだと思う。それだけが、今にして思うと良かったといえるかも、おばさんの手元においていたら、きっと何も分からない幼い子をおばさんは殴っていたと思うから』って、ここまで言うと愛ちゃんのお母さんは、声をあげて泣き始めた、その泣き声が下にいるおばあさんに聞こえてらしく、おばあさんが

『どうしたの、そんなに大きな声で泣いたりして、どうかしたの』って、心配そうに聞いてきた。

『あーぁ、ごめんなさい。夢を見ていたの。私、そんなに大きな声で泣いていたんだ』って、愛ちゃんのお母さんが

『そう、夢を見ていたの、少し、ここに居ようか』って、おばあさんが言うと

『大丈夫、気分は悪くないから』って、愛ちゃんのお母さんが言うと、おばあさんは部屋を出て行った。

『空君、居るの?続きを聞いてくれる』って、愛ちゃんのお母さんが言う

『おばさん、僕、ここに居るよ。疲れていない』って、空君が言うと

『突然、泣いてごめんね。もう、落ち着いたから』って言って、続きを話始めた

『この家で、愛ちゃんは4歳まで生きた、育ったと言うにはあまりにも酷い状態だったと思う。暗い部屋に赤ん坊がろくろくミルクも与えられずに、一人で置かれていたんだから。オムツも取り替えてもらえなかったり、ミルクもろくろく与えられなかったんだから、勿論、愛ちゃんにはおもちゃも無ければ、洋服だって・・・私は何をしていたのかしら。私も、私の母も今、そのことで苦しんでいる、愛ちゃんをどうしてちゃんと育てなかったのか。あの頃のこの家は、全て狂っていた、私が子供の頃は、そんなんじゃなかったのに。そんなこと言っても、元に戻るわけではないけれど、一度でいいから、今は愛おしくてたまらない、今なら何があっても自分の手元からはなすことの無い娘を、抱きしめたい。虫のいい話ね、おばさんはどこまでいっても自分の都合ばかり、愛ちゃんを生んですぐのころも、おばさん、好きな人が出来てそれで愛ちゃんが邪魔になったの。4年間の間に何度か、この家に来たわ。そして、愛ちゃんのことは見ていた、この子私が生んだ子なんだって遠くの方で感じていた。そうね、その時、おばさんは、決して愛ちゃんのことを抱こうともしなかったくせに、この家に来る時におもちゃ一つ、お菓子一つ、洋服一枚買ってきたことが無かったの。なんと言う親かしら、きっと愛ちゃんは、私のことを恨んでいたと思う。恨まない方がおかしい、憎まない方がおかしい。でもね、不思議なの、そんな酷い母親のおばさんなのに、何故か、愛ちゃんの顔だけがはっきりと浮かんでくるの。悲しそうな目で、おばさんを見ているの、じっと見ているの、恨んでいる目でも憎んでいる目でもなく、ただ悲しそうにおばさんを見ているの』って、愛ちゃんのお母さんは、声を殺してすすり泣いている。愛ちゃんも、僕らも黙って聞いている。愛ちゃんの目にも涙が


                    続きはまた天使