そう、愛ちゃんが直接お母さんに話しかけることが出来ないので、空君がお母さんに話を聞くことにした。愛ちゃんは、そのことについて何も言わない。やっぱり、お母さんの話を聞きたくないと言ったところで、僕らが止めるわけが無い、多分そう思ったんだろう。

『さぁ、お母さんが休んでいる部屋に行ってみよう』って、僕が言う、みんなそれに従う。

僕らが初めて愛ちゃんのお母さんを、山さんの中の四番目の扉の中で見たときは、と言ってもそれはモンスターが化けていたんだけれど、そのお母さんと比べることの出来ないくらいに、痛々しいほどに痩せている。どことなく、愛ちゃんの目元に似ている、それはそうだ、愛ちゃんのお母さんなんだもの。

愛ちゃんのお母さんは、ベッドの上で仰向けになり、目を明けてじっと天井を見ている。何を思っているのかは定かではないけれど、涙がすっかりと痩せてしまった頬を伝わって枕カバーを濡らしている。

ドアをノックする音が聞こえる、愛ちゃんのおばあさんが

『薬の時間よ』と言って、薬とお水を持って来た、そして

『また、泣いていたのね』と言って、お母さんの涙を拭きながら、何故かおばあさんも泣いている。

『薬を飲んだら、少し寝るのよ』って言う、おばあさんの言葉にお母さんは、

『そうね、寝なきゃいけないわね』って、力なく答えた。

おばあさんは、お母さんが薬を飲んだのを確認すると、

『気分が悪くなったら、呼ぶのよ、下にいるから』って言って、小さなベルを指差し部屋を出て行った。

愛ちゃんのお母さんは、一生懸命に寝ようとしているように見える。けど、しばらく目を閉じていると、また目を明けて天井をじっと見始める。

空君が、僕とアッちゃんの顔を見て、

『声を掛けてもいいはてなマーク』って、僕とアッちゃんは、愛ちゃんのほうを見て

『いいね』って、

空君は、愛ちゃんの答えを待たずに、愛ちゃんのお母さんに声を掛ける。

『おばさん、さっきからどうして泣いているのしょぼん悲しいことがあったのはてなマーク病気なのはてなマーク』って、とてもストレートな質問をした。

愛ちゃんのお母さんは、少しびっくりした様子で

『あなた、どこから来たの、お名前は』って、聞いてきた。空君は

『僕、空って言うんだ。僕、空から来たんだよ』って、ニッコリ笑って答えると

『おかしい子ね、空から来た空君なの』って、少し泣き笑いしながら

『僕も答えたんだから、おばさんも教えて、どうして泣いているの』って聞く

『どうしてなのかしらね。空君は、何歳なの』って、愛ちゃんのお母さんが聞く

『僕は、7歳』って、空君が答える

『そう、7歳なの』って、愛ちゃんのお母さんは、なんだか天井よりも、もっと遠くの方を見ているようなうつろな目で反復した。そして

『おばさんにも以前、愛ちゃんって言う名前の女の子がいたの。もう10年も前に亡くなったんだけれど、いいえ、多分、おばさんが殺したのも同然なんだけれど』って言って、大きなため息とともに目から涙があふれ出た。

『えっ、おばさんが自分の子供を殺したの』って、空君が聞く

『えぇ、きっとそうだと思う。おばさん、愛ちゃんを育てなかったの、自分の子供なのに、おばさんの大切な娘なのに、それに気付いた時には、もう遅かったの』

『もう一度、この手に愛ちゃんを抱いて最初からやり直したい。どんなお母さんにも、負けないくらいに愛情を掛けて・・・どうして、出来なかったのかしら、母親の私しか頼れるものがいない、あんな小さな子を私は捨てたの。育てることを止めたの。嫌いになったわけではないけれど、じゃまになったの。今では、考えられないけれど、あの頃は、あの頃の私には、言い訳ね、全て言い訳にしかすぎない、酷い親でしょ。苦しんで、当然なのよ、おばさんは』って、愛ちゃんのお母さんが言った。


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