リッちゃんは、お父さんと散歩に、僕らも散歩に行くねって、リッちゃんに合図を送って分かれる。

散歩といっても、これといって目的地があるわけではないので、さぁ、どこへ行こうか。公園の展望台から、町を眺める、車が忙しそうに走っている。昨日の山さんのように自然が壊されて、苦しんでいる場所があることなんか、知っちゃいないって言う感じに、ゴミもいっぱい出ている。

愛ちゃんが、遠くの方を見ながら

『元ちゃんのお母さん、毎日、朝起きると元ちゃんにフードとお水、それにお線香、お花のお水を取り替えて、元ちゃんに話しかけているんだね。きっと、アッちゃんのお母さんも、空君のお母さんもそうなんだろうね』って、淋しそうにポツリと言った。そして

『愛ちゃんは、地上の住民の時も、天界に行ってからも、お母さんに話しかけられたことは無かった。だから、正直に言うと、山さんの中で4番目の扉の中にいた、モンスターが化けていた愛ちゃんを生んだ人が、ごめんねって言った時、そばに着てって言った時ね、愛ちゃん、本当は行ってもいいなって思ったんだ』って

空君は、うつむいて愛ちゃんの話を聞いていた。多分、何て答えるといいか言葉が見つからないんだろう。

僕は、アッちゃんを見た、アッちゃんも僕を見ている、僕たちは、愛ちゃんの家には行ったけれど、愛ちゃんのお母さんは見ていない、そして、あの愛ちゃんの祭壇は誰が見てくれているのか確認していない。お母さんなのか、おばあさん、おじいさん、それともお母さんの弟なのか。でも、僕とアッちゃんは懸けてみたくなった。アッちゃんに、『行ってみようか』ってテレパシーを送る、『うん、行ってみよう』って返ってきた。

『愛ちゃん、行ってみよう。愛ちゃんの家に、愛ちゃんが育った家に』って、僕が言うと、愛ちゃんは大人びた顔をして、

『いいよ、行っても。何も期待していないから。別に、これ以上は、傷ついたりしないから』って、

愛ちゃんの横にいた、空君のほうが、えっ、えっあせるって顔をして、誰にも聞こえないくらいの声で

『怖い』って、一言。この怖いのなかには、色々な意味が入っている。空君は祭壇のことは知らないから特に、僕もアッちゃんも、怖いと同じような意味で不安だ。

『よし、決まった、そうと決まったら、早いほうがいい、今から行こう』ってアッちゃんが、空君の顔が絶望的にガーン

僕らはいつものようにアッちゃんの背中に、アッちゃんが迷うことなく愛ちゃんの家の屋根まで着くと、愛ちゃんは

『何で、愛ちゃんのお家が分かったの』って、不思議そうに聞く

『僕、空君の家も分かるよ。それに、あのビルで話を聞かせてくれたいろんな人たちの家も分かるよ』って、アッちゃんが、自慢げに

家の中から、お線香の香りがしてきた、誰かが昨日見た祭壇にお線香をあげているんだ。僕とアッちゃん、顔を見合わせて、ほっとした。空君から、大きなため息が聞こえた。

愛ちゃんだけが、開き直って、えいって感じだ。

『さぁ、入るよ』って、アッちゃんが言って、何故かリビングから、僕は心の中で芸が細かいって思った。そして、愛ちゃんの絵が飾られてある、あの祭壇のある部屋に。山さんで見た、愛ちゃんのお母さんが祭壇の前に座り、手を合わせてお祈りしている。閉じている目にうっすらと涙が、にじんでいるのがわかる。

お母さんは、そこに愛ちゃんがいることも、僕らがいることも知らないわけだ。

『愛、ごめんね。お母さんが大人に成りきれていなくて、あなたを辛い目に合わせて、こんなにしちゃってごめんね』って誤っている。

『お母さんは、愛に何もしてあげていないから、愛は何も知らないのよね。食べ物も、おもちゃも、外も、友達もつくって上げられなくて』って言いながら声を出して泣き始めた。

お母さんのお母さんらしき人、愛ちゃんのおばあさんが入ってきた

『もう、それくらいにしなさい。少し休みなさい』って、ベッドのあるお部屋に連れて行った。なんだか、愛ちゃんのお母さんは、病気にような感じだ。愛ちゃんは、黙ったまま、自分の絵が飾られている祭壇の前に、今までお母さんが座っていたところに座り、じっと正面を見ている。どう受け止めるといいのか、戸惑っているみたいだ。空君も、僕もアッちゃんも、泣いている。僕らは単純に今しか分からないけれど、4年間しか地上に、この家にいなかったけれど、愛ちゃんにとっては辛い4年間を過ごしたわけだから、泣くこともできないんだろう。


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