僕らは、号泣している。僕が生後3ヶ月の時は、確かに猫のお母さんとは離れていたけれど、人間のお母さんに嘗め回されるように育てられていた。子猫さんが話しているようなことは、想像もつかない。子猫さんのお母さんたちを埋めてくれた人は、きっと子猫さんを連れて帰りたかっただろうな。でも、ぬか喜びさせるのは、余計に可哀そうだと思ったのだろう。僕、アッちゃん、空君は、愛ちゃんが複雑な気持ちで泣いていたのがわかった。愛ちゃんは、お母さんの愛情に敏感だから。僕らは、子猫さんが落ち着くのを待った。

ガス管の方は、今のところ大丈夫だ。ガスの臭いも


子猫さんが、天井に顔を上げ、少しつづ視線を下に、そして話しはじめた。僕らは、子猫さんの話しに耳を覆いたくなったことを今でも覚えている。

『そう、私は一人きりになってしまったの。ハスキーさんのように山の中ではないけれど、人も通っているけれど。行きかう人の中には、『まぁ、可愛い』とか、小さな子供は、『お母さん、この子猫、飼いたい』っていってくれる子供もいた。そして、私はいつの間にか、人間はみんないい人なんだって思うようになったの。それは、何度か食べ物をもらったからだと思う。今、思い返すとお母さんが、私に最後に言っていた言葉の意味が分かるような気がする、『何も教えることが出来なくてごめんね』って、私、人間のことが全くわからなかった。だから、あの子の誘いにも、何も疑うことなく、誘いに乗ってしまったの。その子は、空君って言ったわよね、あなたよりも3、4歳年上に見えた。私に、ミルクを持ってきてくれたの、アッ、それとお魚のほぐした身も。私は、いつだってお腹が空いていたから、何の疑いも持たずに、その子の後をついていった。だって、優しい声で私に、もっといっぱい食べ物をあげるから付いておいでって言ったんだもの。私、すごく嬉しくなったの、食べ物は当然だけど、お母さんたちが亡くなってから、まだ何日も経っていなかったけれど、子猫の私には何ヶ月にも感じてた。その間、誰と話すこともなく、誰にも甘えることも出来なく、じゃれあって遊ぶこともなかったから、このお兄さんは遊んでくれるんだって、勝手に思い込んでしまったの。アー、これで暗い夜を一人で泣きながら、朝が来て明るくなるのを待たなくてもいいんだって思ってしまったの。その子からすると、子猫の私はとても都合が良かったみたい。これから、自分がしようとしていることには、特に。私は、薄暗い小屋に連れて行かれたの、その子は私においでって、手招きして自分の膝に私を抱いたの。私は、嬉しかった、すごく。わかるかしら、お母さんたちが亡くなってから、初めてふーって感じになったの。でも、それはつかの間の幸せだった。その子の考えと、私との考えには大きな違いがあったの。その子は突然、あーぁ、この突然というのは、私にとって突然で、その子にとっては必然と言ったほうが、正しいと思う。とにかくその子は、私の顔をグーで殴ったの、私は気を失った』と、ここまで言うと子猫さんは首に手をあてた。

特に気にしていなかったんだけれど、子猫さんの首にはバンダナが巻かれていた。

『私は、気を失っている間に首をナイフで切断されたの』ウウゥって子猫さんが唸った。

『私は、馬鹿よね。きっと自業自得なのかもしれない。でも、私の蝋燭の炎は、火が点いたばかりでお母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃんの分まで赤々と燃えるはずだったの。それが悔しくて。そして見たのよ、天界でその子は、私以外にも子猫を殺しているのを。子供でも、私は許せない』

子猫さんは、さっきと同じように天井に顔を上げ、一生懸命涙を堪えている。

話を聞き終わった、僕らと大人のねずみさんたちが泣いている。

子猫さんのバンダナは、首の傷を隠すためはてなマークそんなことはない。天界に行くと、病気も怪我もすっかり治るんだから、傷が残っているわけがない。きっと、そのときに受けた、心の傷だけが癒されることがなかったんだろう。かける言葉も浮かばない。


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