ママの膝に無表情な顔をして、お座りをしていた愛ちゃんの目が、『地上に戻る』という言葉に、異様に反応した。それに気が付いたのは、僕だけではない、みんなが気が付いた。

ドッグマザーが、少し前のニコニコニコニコした顔とは、逆に厳しい顔をして、話し始めた。

『愛、あなたにとって地上に戻るということは、あなたの心の中に住みついているモンスターと戦うということですよ。愛がモンスターの化身になって、人の体に住みつき、愛を苦しめた人たちに復讐するのではありません。愛と同じように、苦しんでいる子供たちを救うために戻るのですよ。愛に出来るはずです、自分の心の中のモンスター戦うことが、そしてモンスターを追い払うことが出来るはずです。愛は、優しい心の子なんです。そうやってママに抱かれていると、感じるでしょ、自分の中の温かい、血の通った優しさを、今も戦っているのでしょ、モンスターと。きっと、空と元気とアルフが、愛を助けてくれます。愛の蝋燭は、無残に消されてしまったけれど、その無念さを優しさに変えて、こうしている間にも消されようとしている蝋燭の炎に息を吹きかけて欲しいのです。一人でも多く子供たちを、救って欲しいのです。私たちは、ここで見ていることしか出来ないのです。愛、勇気を持ってモンスターと戦いなさい』


愛ちゃんの顔が、真っ赤になっている。そして、ドッグマザーの言った言葉に、

『そうかもしれない。私は、優しい子なのかもしれない。ドッグマザーの言うように、私のように苦しんでいる子供が沢山いるのかもしれない。そして、その子たちを助けることが出来るかもしれない。でも、私は、許せないビックリマーク私の折れることの無い蝋燭を折り、消えることの無い蝋燭の炎を消した、私の家族を。もし、他人であれば、許す気持ちが出てくるかも知れない。もし、あの4年間のうち、一度でもあの女が、私をこうしてママのように抱いてくれていたら。せめて最後に、ごめんなさいと誤ってくれていたなら、愛は、迷うことなく天界の世界に入って行き、ここに戻ることは無かった。空君や元ちゃんやアッちゃんのように、愛されていなくても、思い出が無くても。私は、耐えることが出来たし、許すことも出来たのに』


愛ちゃんを膝の上に抱いている、ママの目に涙が浮かんでいる。愛ちゃんの苦しみを、愛ちゃんの辛さ、悲しみをまるでママが吸い取っているみたいに僕には見えた。僕が地上にいたころ、テレビのニュースで親が子供を虐待して、殺してしまったというを見たことはあったけれど、本当は信じられなかった。動物の虐待もそうだけれど。親や飼い主が、子供や動物を愛するということは、極普通のことだと思っていたから。僕は、愛されるということが、可愛がられるということが、当たり前のことだとずっと思っていたから。多分、アッちゃんも僕と同じだと思う。ただ、空君は地上にいたとき、7歳とは言え人間として生きてきたのだから、僕らとは少し違っているみたいだ。

空君が自分の周りにいた子の話を始めた。


『僕のクラスにもいたよ。お母さんやお父さんから、虐待を受けていた子。でも、その子たちは、決して先生にも周りの人にも、そのことは話さないんだ。その子たちは、お母さんやお父さんのこと好きだから。きっと、愛された少ない思い出が虐待する親を、許しているんだと思うよ。だから、周りが気付いた時には手遅れの時もあったりするんだ。後、周りの人たちが気付いても、誤った判断をすることもあるし、見なかったことにしちゃう人もいる。どっちにしても、子供って弱いから、そして、大人に左右されるから、僕も力ちゃんも・・・』


なんだか、空君は、自分と力ちゃんのことで、心が揺れてきたみたいだ。


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