れいちゃんが、来た。診察室で先生とお話をしている。僕は、出来るだけ二人の話を聞かないように、耳を伏せる。それは、アッちゃんに対しての僕に出来る限りのなんだろう、そうだな、僕上手く嘘がつけないから、聞いていなければ、後でアッちゃんに何か聞かれても分からないと言えるから。もう、僕やアッちゃんの病状は、この先良くなるとは思えない。先生だって、口には出さないけれど難しくなってきていると思っているだろうから、きっと良いことはそうそう聞けるとは思えない。僕は正直言ってネコの病棟が嫌だ。だって、診察室の隣りなんだもの、知らない子達のことでも、シビアな病状は聞きたくない、反対に元気になって退院して行く話は、誰のことでも嬉しいからいいんだけれど。れいちゃんは先生との話が終って、アッちゃんのところへ行くんだ。とり合えず
ネコの病棟を通らなければいけないので、僕に「元ちゃん、元気になったんだって、良かったね、もう少ししたら、お母さんが来るよ」って言って、寒さを防いでいる透明のカバーをめくって、僕の頭を撫でてからアッちゃんのところへ行った。れいちゃんとアッちゃんの話し声が聞こえる。僕には。二人がどんな風にしているかが、見えなくても分かる。アッちゃんは、今日一日僕には言わないけれど、ずっとれいちゃんが会いに来てくれるのを待っていたんだ。看護婦さんがいくら親切にしてくれても、僕のお母さんがマッサージをしても、ただただ、れいちゃんが来てくれるだけで、何もしてくれなくても顔を見れるだけで、声が聞けるだけで、今この世界にいることの幸せを感じることが出来るんだ。僕も、お母さんが来てくれるのを待っているから、さっき来てくれたけどそれでも、ずっと一緒にいたんだ。れいちゃんが来て、三十分位してから、お母さんが来た。お母さんは、僕のことを抱っこしたかったみたいだ、僕もお母さんに抱っこされたかった。でも、お母さんはじっと我慢したんだ、僕に「元ちゃん、お母さん、本当は元ちゃんのこと抱っこしたいんだけど、我慢するね」って、「もう少し、元気になったら、せっかく落ち着いてきたんだもの」って。僕は、「もう、我慢しないで、しっかり僕のこと抱っこして」って言いたかったけど、お母さんの目は、まだ希望を捨てていない。僕が、諦めた顔は出来ない
今朝、お母さんが持ってきてくれた、Tシャツに包まって我慢することにした。お母さんは、お父さんやリッちゃんが「心配しているよ」って、「リッちゃんは、昨日からしょんぼりしているから、早く良くなってお家に帰らなくちゃ」って。病院は、8時までなのでお母さんは、「もうそろそろ帰らなければいけないから、アッちゃんにバイバイして来るね」って、アッちゃんのところへ。そして、れいちゃんと二人で僕にも、「明日の朝、また来るね」って言って、二人して病院を出た。二人は、病院の入り口にあるベンチにどちらからともなく、腰を掛けて同時に大きなため息をついた。この時すでにれいちゃんは泣いていた、そして二人が思ったのはアッちゃんは、かなり重体だ。僕のことは、二人とも明日か明後日には、退院出来るんじゃないかって思ったんだ。僕には、病院の入り口のベンチで二人が話しているのが、聞こえるんだ。お母さんは、れいちゃんを慰めている、慰めながら泣いている。お母さんは、五月九日が誕生日だ、だから明後日には、僕を退院させて一緒に居たいって言っている。れいちゃんは、「大丈夫じゃないの。元ちゃん、退院できそうな気がするよ」って、「アッちゃんは、このままは可哀そうだよね、色々考えてはいるんだけれど。どうしてあげるのが一番良いのか。また発作が起きて、苦しい思いをさせるは・・・」「アッちゃんも辛いし、私も・・・このままだとあと何日もつか」 「それは、安楽死ってこと
私は元に対しては、仮に手術をしたら良くなるかもって言われても、しないと思う。歳も歳だし、これ以上苦しい思いはさせたくない。今だって輸血したり、いろんな治療とかしているけど、元ちゃんはどう思っているのかなってことは思うよ。家に連れて帰った方が良いのかとか。元が動けなくなったら、アッちゃんとは大きさが違うからね。でも、多分延命って言うのはしないと思う。自然にって、難しいね」
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