お母さんが、待合室から診察室に入って先生とお話をしている。看護婦さんが僕のところへ来て、「元ちゃん、お母さんが来たよ」って、僕はニコニコニコってした、心の中で知ってるよって言いながら。看護婦さんは、僕がニコってしたのに気が付いて、「嬉しいねぇ」って、僕はきっと「うん、うん」って首を振っていたと思う。先生とのお話が終った、お母さんが僕のところに来た。僕は、「お母さん、僕お利口にして、先生の言うとおりにしていたよ。点滴も輸血もいい子だったよ。全部、ご飯も食べたよ」って一気に言った。お母さんは、ゲージに掛かっているカバーを少しめくって、僕の頭を撫でながら、涙を浮かべて「良かった、良かった、いい子だったね、元ちゃん」って、先生と看護婦さんも来た、二人とも僕が「偉かった」と誉めてくれた。先生と看護婦さんが行ってから、お母さんは一生懸命に僕の体を撫でてくれた、「だるくないの、痛くないの、苦しくないの。いい子だね、元ちゃんは」って、やっぱり泣いている。お母さんは、ひとしきり泣いて落ち着いたら、今度は「元ちゃん、いつ退院出来るだろうねはてなマーク早く、退院出来るといいね」って。お母さんは、僕が治るって信じきっている。お母さんの中では、僕はいつも不死鳥なんだ。そんなわけがないのに、去年の覚悟はとっくに忘れている。そうかも知れない、僕は去年、何回も生死をさ迷った、そしてその都度、持ち直したんだ。多分、人間だけじゃなくて、動物の医学って言うのも進歩しているんだろうな。しばらく、お母さんは僕と話しをしていた、一方通行のようだけど、僕とお母さんの間では会話が成立している。そんな風に思っている人は、沢山いるような気がする。それから、お母さんは、「アッちゃんのところに行ってくるね」と言って、わんわんイヌさんの病棟へ行った。相変わらず、アッちゃんはエアーマットの上で寝ている。お母さんが行くと、目を開けて嬉しそうにほんの少し、しっぽがパタパタする。お母さんの目には、そのパタパタのしっぽがいじらしく映るらしく、「アッちゃん、おばさんが来たの分かったんだ。少しマッサージしようか」って言いながら、ここでもまた泣いていた。「今日は、ご飯ちゃんと食べれたかな」なんて言いながら、アッちゃんの目やにを拭いたりして、「おばさん、夜もまた来るね」って、もう一度頭を撫でて、僕のところに来て「元ちゃん、お母さん夜も来るね」って言って帰った。きっと、お母さんは、少し安心したと思う。僕は、少しぼーっとしていた、アッちゃんは点滴をしている、看護婦さんが、僕を覗き込んで「元ちゃんは、少しお休みできるよ」って。そう、アッちゃんの腕にも、僕の腕のにも、注射の針がついているんだ。すぐに、いろんな処置って言うのができるように、前もつけていたんだ。点滴が終ったアッちゃんが、「陽子ちゃん、嬉しそうだったね。元ちゃんが、元気になって」「でも、僕を見て泣いていたけど」って話しかけてきた。「うん、けど、ずーっと元気ではいられないから、お母さんはしょぼん泣き虫なんだ、ごめんね。リッちゃんと同じで、アッちゃんが病気になって寝ていると言うのが、信じられないんだ。お父さんもそう言っていた、アッちゃんはリッちゃんと同じ年だし、上手く言えないけれど、重なる部分があるんだと思う」 「しょぼん泣き虫なのは、僕のお母さんもそうだから」って。それから、アッちゃんとれいちゃんの思い出話を少し聞いていた、旅行に行った時のこと、散歩で出来た友達のことなんかを、そのうちに夕食になって少ししたら、れいちゃんが来た。アッちゃんは、鼻も耳も利かなくなったて言っていたけど 、れいちゃんが病院の入り口のドアに手をかけたときには、「アッ、お母さんが来た」って嬉しそうに言った。僕は、なんだかその声を聞いて時、嬉しい気持ちと無性に切ない気持ちが交差した。


                     続きはまたにゃーわんわん