そうか、今日は子供の日なんだ。そう言えば、この前お母さんが鯉のぼりの話をしていた、「元ちゃん、空にお魚さんが泳いでいるんだよ。見に行く」って、僕は、見たい気はしたけれど、
桜はベランダから見えるんだけれど、鯉のぼりは、見えないんだ。でも、お母さんは近所のマンションで、小さくて可愛い鯉のぼりを見つけて、僕に見せてくれた。「去年は、なかったよね」って言いながら。リッちゃんは、散歩の時に公園でいっぱい泳いでいるのを、見てきたって教えてくれた。因みに、お母さんは、雛人形はあまり好きではなく、鯉のぼりが大好きなんだ。僕とリッちゃんは、陽のあたるベランダの前で横になっている。これといって、もう話をしなくても良いんだ、何気なくお母さんの方を見ると、お母さんは僕のご飯のお皿を見て首をかしげている。あっ、もしかしたら、何か気が付いてしまうかも知れない。でも、半分以上は頑張って食べたんだけど、僕とお母さんの目が合う、お母さんは僕の顔を確認する。目、鼻、貧血になっていないか見ている、こっちに来る僕を抱っこして、口を開き歯ぐきを見る、これといって以上がなさそうだ。ただ、食べたくないだけかって、思ったらしい。僕に「元ちゃん、ご飯贅沢言わないでちゃんと食べなきゃ駄目だよ」って言う。僕は、「分かっているよ、僕も食べたい気持ちはあるんだけれど・・・ちょっと、食べれないんだ」って、心の中でつぶやいてみる。お昼が済んで、お父さんとお母さんが出かけた。リッちゃんが 「元ちゃん、お母さんに体のこと伝えた方がいいんじゃないの」って聞いてきた。僕は、リッちゃんに「お母さんに、具合が悪いことが分かっちゃうと、すぐに
病院に連れて行かれちゃう。僕、病院に行きたくないんだ。今度行ったら、僕もう、お家に帰って来れられないような気がするから。僕、お家に居たいんだ。リッちゃん、分かるだろう。それに、二、三日中には、黙っていてもお母さんたちには、僕の体の調子が悪いの分かってしまう」って言う。リッちゃんは「でも、元ちゃん病院で先生に見てもらったほうがいいよ。もしかしたら、お薬を替えると良くなるかも知れない、早いほうがいいんじゃないの」って。僕は「リッちゃん、僕の蝋燭の炎は、もう燃え尽きそうなんだ。それは、どうにもならないんだ。僕は、十分に生きてきたと思うよ。人間で言えば、僕は八十歳を超えているんだから。そりゃ、欲を言ったらきりがない。もっともっと長生きする、
ネコさんたちもいるけれど、僕にはここらが限界なんだ。この一年、何度も危ない時があったけれど、ここまで来れたんだから、僕はみんなに感謝しているよ。これって、大げさかもしれないけれど、奇跡だよ」って言う。リッちゃんは黙っている、僕は続けて「僕ね、リッちゃん、少しでも長くお家に居たいんだ。お父さん、お母さん、リッちゃんのそばに居たいんだ」って言いながら、僕は泣いてしまった。「僕は、新しい世界に行くことには、やっと覚悟が出来たと思うんだ。それに、前みたいな恐怖心がなくなったんだ。ただ、最後までみんなと一緒に居たいんだ」リッちゃんは、遠くの方を見ている、場面を変える努力をしているんだ。いつもなら難なく、この暗い重苦しい空気を替えてくれるのに、僕が言いすぎたんだけど、ついリッちゃんには、甘えて言ってしまう。思い切り言ってしまうと、僕は楽になるけれど聞いているリッちゃんは、いつも辛かったと思う。リッちゃんが、突然「今日の
ケーキはどんなのだろう。ケーキは久しぶりだよね」って、「そうだね、久しぶりだね。袋が黒かったからデメルのケーキだよ。きっと、僕は、あそこのチョコが好きなんだ。楽しみだね」って僕は答えた。そして、心の中でケーキを食べれる力が、夜まで残っていますようにって祈った。僕とリッちゃんが、そんな話をしている間も、れいちゃんのところのアッちゃんは、かなり苦しんでいた。
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