お母さんは、深刻な顔をして車車を運転している。時々、僕の顔を見る、信号機信号で止まるとバスケットの金属で出来ている網のドアのところから、指を入れて僕の頭を撫でながら、「元ちゃん、アッちゃん大変なんだよ。れいちゃんが・・・どうしようね、元ちゃん」って言いながら、目がうるうるしている。きっと、自分に置き換えているんだと思う。そして、お母さんには、僕は今のところ、あの検査結果でもなんとか元気でいるんだと思っている。何も伝えられないのが、歯がゆい気はするけど、ある意味お母さんにとっては、幸せなのかもしれない。お家に帰ってから、お母さんはお父さんに、僕の検査結果とアッちゃんのことを説明している。説明しながら、今、面会してきたアッちゃんを思い浮かべて、泣いている。「てんかんの発作が薬で何とかなっても、もう歩けないかも、なんとなくそんな感じがする」、「本当にれいちゃん、引越しするようになるかも、階段は絶対に無理だと思う」、「アッちゃんを見た時、なんて声を掛けていいか判らなくなっちゃた」、「きっと、気が付いてくれたと思うんだけど、少し目が開いた時に、アッちゃんって呼んだら、目が動いたような気がするから、頭はある程度しっかりしているんじゃないかな」、「色々と薬使っていると思うから、副作用も出るかも、なんか、元ちゃんとダブって切なくなってきちゃう」って、お父さんは、黙ってお母さんの話すことを聞いていた。そして、「みんな、歳だからな、それでも、長生きの方なんじゃないのか」って。病院には、いつも朝一番で行くので、お母さんたちはお昼を食べて、午後から出かけた。リッちゃんは、お母さんたちが出かけるのを待っていた。アッちゃんのことが気になっているんだ、お母さんの話は聞いていても、僕からも聞きたいんだと思う。リッちゃんは、二人になると陽があたってポカポカしている、ベランダに僕を誘った。そしてすぐに、「お母さんの話を、僕も聞いていたけど、元ちゃんはアッちゃんに会ったの」、「僕は、会ってはいないんだ。けど、信じてもらえないかもしれないけれど。僕、アッちゃんと話をしたんだ。アッちゃん、自分の蝋燭の炎がもうそろそろ消えそうだって言っていた。この間の発作の時に随分勢いよく燃えたらしい。すごく、苦しかったって言っていた」、「そうなんだ。アッちゃん・・・いつも、アッちゃんと会うとケンカばかりしていたけど、病気ひどいんだ。元ちゃん、アッちゃんもう治らないのしょぼん」、「うん、多分。僕と同じくらいのような気がする。それでね、リッちゃん、アッちゃんから頼まれたんだけど」、「えっ、僕にはてなマーク僕に出来ること」、「うん、リッちゃんしか、出来ない」、「僕に出来ることなら、アッちゃんも僕らの仲間だもの、そうだよね」、「そうだよ、仲間だよ。それで頼みというのは、リッちゃんには、僕もお父さんとお母さんのことを頼んだんだけど、アッちゃんもれいちゃんのことを頼みたいって言うか、お願いしたいって」、「でも、僕は、お家に居るから、れいちゃんのところへは行けないよ」、「うん、それは分かっているよ。アッちゃんが頼みたいのは、きっと自分が新しい世界へ行ったあと、れいちゃんが僕らの家に遊びに来たとき、れいちゃんにいっぱい甘えて、いっぱいじゃれて、いっぱいリッちゃんの匂いをれいちゃんに付けて、少しだけでもいいから、心に温もりや癒しを感じさせてあげて欲しいんだと思うよ」、「そして時間が上手くあったら、これは僕らにはコントロールできないけれど、散歩にも行って欲しいんだと思う」、「そうか、そういうことなら、僕にも出来るね。今までといっしょのことだもの、れいちゃんが遊びに来た時、僕いつもれいちゃんに匂いを付けていたもの、きっとアッちゃん知っていたんだ」、「アッちゃんに、まかせておいて、僕にって伝えて。安心して良いよって」、「リッちゃん、みんなリッちゃんに、押し付けちゃったね。ごめんねしょぼん許して欲しい」、「僕、リッちゃんに何もしてあげられないのに」、「そんなことないよ、元ちゃんは僕のお兄さんだもの。それで、自分の調子は」、「うん、薬も飲んでいるし、もう少し頑張るから。そうだ、リッちゃんお腹空いているんだろう。僕のご飯食べていいよ。僕はいっぱいだから、お皿が空の方が、お母さん安心するし、食べなよ。ただし、あんまりきれいになめちゃ駄目だよ。僕らしくないから、フ、フ、フ」


                     続きはまたチューリップ黄