お父さんとお母さんが、出かけた。出かける前に、お母さんが「元ちゃん、お母さんとお父さんはお出かけするけど、リッチちゃんは、ハウスに入っているからトイレ
は、我慢しなくて大丈夫だよ」って。僕のトイレは、お母さんたちのトイレ
の横にあるんだ。リッちゃんがハウスから出て、うろうろしていない限りは遭うことはないんだ。ハウスのお部屋では、お父さんがリッちゃんに「リッチ、ハウス」って言っているのが聞こえた。ハウスのお部屋からは、何も聞こえてこない。どうやら、リッちゃんは寝ているみたいだ。僕らは、まだ正式には紹介されていない。僕が、炬燵の中から必要以外に出てこないので、お母さんたちは対面させるのは、まだ早いと思っているから。とは言え、怖いもの見たさの、好奇心だけはドンドン膨らんできている。多分、リッちゃんも、僕のことを見たいと思っていると思う。でも、自由なのは僕だけなんだ、見に行っちゃおうかな、どうしようかな、僕は結局、意を決して会いに行くことにした。尻尾を立てるか、下げるか悩んだ、これは重要なことだから、最終的には恐る恐るだったから、普通にしていたかも疑問だ。僕んちは、どのお部屋も基本的にドアは開けぱなしなんだ。だから、初め脇の方から、リッちゃんのハウスのお部屋を、そーっと覗いて寝ているのを確認してから、出来るだけ音を立てないように、ハウスの前に立った。そして、しばらく見ていたんだ。後から、リッちゃんがこの時の事を、「元ちゃんは、凄く汚わい顔をして、偉そうに大またで歩いてきて、ハウスの前でじーっと僕のことを見ていた」「僕は、この家に来たばかりで、余り慣れていなかったし、散歩で時々見るネコさんとは、随分違うから僕も怖かったよ」って。リッちゃんは、本当は寝ていなかったんだ。薄目を開けて、僕のことを見ていたんだって。その日、僕らは無言のまま、お互いを観察しあったことになる。多分、それから二日位して僕らは、お父さんとお母さんに紹介されたと思う。リッちゃんは、本当に二ヶ月、いや一ヵ月半くらいかな、ハウスのお部屋以外には入らなかったんだ。それは、誰か遊びに来た人もリッちゃんと遊ぶ時は、ハウスのお部屋でって決まっていたんだ。よく考えると、その間、リッちゃんには随分可哀そうなことをしたと思っている。だって、僕は、お父さんとお母さんと何時も一緒のお部屋にいて、甘えていたんだから。きっと、リッちゃんはハウスのお部屋で、「何で、僕だけ一人で、ここに居なきゃいけないんだ」って、「詰んないし、淋しいし、良いな元ちゃんは」って思っていたと思う。そして、きっとお父さんと二人の時は、いつも好きにしていたんだと思う。でも、一日一日、日が経つにつれて、何故か、リッちゃんは一歩づつ、入って来てはいけないところに、出てくるようになった。僕も、日が経つにつれ、その一歩が気にならなくはなってきていた。完全ではないけれど、トイレに行くときなんかに、廊下にリッちゃんが居ても、引き返すこともなくなってきてはいた。
続きはまた![]()