捨てればゴミ 使えば資源 -5ページ目

争奪戦

私が高校生の頃の話。
そのときの私は、なぜか とんがって いて、進学する学費やら生活費を自分で賄おう 
と考えて、アルバイトをしていた。

そのアルバイトが、ちっちゃなスーパーのレジ係。
そのスーパーは大学の近くにあり、客層の7割は学生さん。
学生向けアパートもたくさんあったことから、ほとんどが都道府県から来ていた人たちだった。
他都道府県から来ているということは、親からの援助を受けているか、バイトか、どちらにせよ
倹約しているなというのが、買い物をする品物を見れば伺うことが出来た。

そのスーパーでは店内で惣菜を作って販売もしていた。
弁当とか、おかずの詰め合わせとか。学生向けなので量は多い。
売れ行きも良かったらしく、大量に作っては売りさばいていた。
しかし、売れ残らずに売り切れるということは無く、夜の8時になると半額にして販売していた。
今のスーパーのように半額シールを張るとかではなく、時間が来たら 半額です というボードを
弁当の並んでいるカウンターに置くというもの。8時以後にレジへ持っていくとレジで半額にするのだ。
倹約している学生さんたちは、それを目当てでお店にやってくる。
半額ですボード係 を任命されていた私の目線で、ある日の争奪戦の模様をお伝えしよう。


7:40  明らかに半額狙いの学生さんが来店してくる。いつもの常連さんだ。今日は早い。
      昨日 カツどん をゲットできなかった反省からなのか、気合が入っている。
      弁当を見定め、時間つぶしの立ち読みを始めた。しかし、目は弁当をちらりちらり見ている。 

7:45  店内での立ち読み客が増える。半額ゲッターたちだ。ポジション取りが激しい。
      弁当カウンターに近い場所をゲットする心理作戦がすでに行われている。

7:50  やつがきた!この争奪戦最強の戦士。180センチ100キロほどの巨漢。
      彼は 立ち読みで時間をつぶす という姑息なまねはしない。
      10分間、ひたすら弁当カウンターの前で待つ という真正面から勝負に出るナイスガイだ。
      しかも、他のお客さんの邪魔にならないように立ち位置を変える という気配りも出来る。
      心技体 の揃った、まれに見るファイターだ。

7:55  勝負の時まで後5分となった。そろそろ私の出番だ。帳簿を取り弁当カウンターへと向かう。
      半額で販売することになる 弁当、惣菜の種類と数をチェックするという、半額ですボード係の
      大切な仕事をするためだ。
      ふむ、今日は珍しく 焼肉弁当 が2個残っている。一番のねらい目はこれになるなずだ。
      1個は最強の戦士がゲットするはずなので残りは1個。栄光は誰の手に渡るのだろうか?
      ファイターの数は8人。対して弁当の数は7個。この中で一人は敗者となる。
      悲しいけど、これが現実だ。

8:00  さぁ時間だ!
      私はカウンターの下から 半額ですボード を取り出し弁当カウンターの上に置く。
      一斉に動く半額ゲッターたち。最強ファイターは焼肉弁当をゲット。予想通りだ。
      一番乗りの常連さんが出遅れた!位置取りを失敗したらしい。二連敗か?
      ここまで見届けて、私はレジへと戻る。
      押し寄せるであろう半額ゲッターの為に、レジを解放しなくてはいけないのだ。
      

8:01  獲物を手にした半額ゲッターたちがレジへとやってきた。
      最強ファイターは笑顔で支払いを済まし「おおきにー。」と挨拶して帰って行った。
      年下のバイトにでもニコニコと挨拶してくれる。最強ファイターはやっぱすごい。
      ゲッターそれぞれが、半額の弁当を抱えてレジを済ませてゆく。
      もうひとつの焼肉弁当をゲットしたのは、45分に来た中堅の半額ゲッターだ。
      おめでとう と心の中で労をねぎらい、袋に入れて手渡した。
      次々とレジを通るゲッターたち。その中に一番乗りの常連さんの姿があった。
      手にしているのは、しゃけオニギリ2個とカップラーメン。2連敗・・・。
      「お箸はお付けしますか?」の私の問いにも「いえ、いいです・・。」とちっちゃい声でしか答えない。
      帰る背中もちっちゃい。
      明日はがんばれ! という意味を込めて「またのお越しを~」とその背中にかけた。

      今日も壮絶な戦いが終わった。



あれから相当な月日が過ぎた。
半額ファイターたちも、今頃は社会で戦っているのだろう。
そしてまた新たな半額ファイターたちが、今もどこかのスーパーで戦いを繰り広げている。
すべての戦士たちに幸運を。