難関大受験と言えば、文系でも数学が必須のイメージが強いですが、東大文系の二次試験は実は数学の配点が低いことは、私が以前から申し上げている通りです。

なので、数学苦手な受験生が東大文系を目指す場合、対策しても点数アップが期待できない数学に時間をかけすぎるよりは、やればやるほど確実に点数が上がる国英社を着実に固めた方がはるかに効果的です。
ここで注意すべきなのは、「数学に見切りをつける」というのは、数学の勉強を一切やらないということではありません。やはり共テの数学は満点近い点数を狙えるようにしておくべきです。
あと、私大併願校の数学も合格レベルにしておく必要があります。といっても、私大文系の数学は、早慶レベルであっても、東大どころか、他の旧帝大よりも易しめです。(しかし、それは文系数学に限った話であり、さすがに早慶レベルとなると国英社はそれなりに難しいです。)いずれによせよ、どうせ解けるはずもない東大の難問奇問対策に時間をかけすぎるよりは、例えばオーソドックスな慶應経済の数学を確実に解けるようにした方が得策です。
駿台や河合の東大模試の数学は難問奇問の出題が中心で、私も限りなく0点に近い点数を連発していましたが、実際の東大入試では、共テや私大文系数学程度の実力でも解ける問題が出題されることも結構あります。いくら数学が苦手といっても、共テの数学すら解けないようでは話になりません。
昨今では中学受験が過熱化し、勉強が算数偏重になっている影響なのか、大学入試でも数学ばかりが持ち上げられすぎている印象を受けます。特に、首都圏の中高一貫校で鉄に通塾する受験生は、数学が苦手であっても数学偏重の勉強から身動きが取れなくなります。鉄のカリキュラムが数学に寄りすぎているというのもあるのでしょうけど、あまりに多くの受験生が数学神話に洗脳されすぎている(数学ができると格好いい、できないと恥ずかしいと思い込んでいる)ところが大きいように思います。
いわば実際の入試レベルよりもはるかに上の算数の難問が解けることを格好いいとみなす、中受以来のサピックス病が高校生になっても治っていない状態です。
数学が共テ対策プラスアルファ程度の勉強で十分であれば、わざわざ鉄に行く必要はありません。数学苦手な受験生が数学偏重の勉強をしすぎると、東大だけでなく、早慶の合格も遠ざけてしまうように思います。
数学が得意である場合も要注意です。我々の頃も、東大文一と早稲田法(入試科目は国英社)のダブル合格を狙っているのに、なぜか数学ばかり勉強して得意がっている受験生はいました。(当然結果はダブル落ち)
文系学部を目指すのに、国語や社会の方が数学よりも配点が高いのに、数学よりも「格下」だと思っていませんか?
数学を勉強している自分は、そうではない私大専願の人たちよりも偉いと勘違いしていませんか?
そして、数学をマウントの道具として利用していませんか?
逆に言えば、東大受験生の場合、文系志望であっても国英社を固める勉強法を採る受験生が少数派で、その至極当たり前の勉強法がなぜかブルーオーシャンになっているとも言えるわけです。数学へのバイアスがないという意味に於いては、首都圏の上位中高一貫校よりも、それ以外の中高一貫校、あるいは中受を経験していない公立高生の方が有利とさえ言えるのかもしれません。