駅舎からデッキに出ると、
歌声が聞こえてきた。
聞き覚えのある、
いや、最早耳に馴染んだ綺麗な声。

ユニットの名前はCoral Reefというのだそうだ。
調べてみるとこの駅だけじゃなく、
他でもライブをやっているらしい。

声も綺麗だし、歌い回しも上手、
徳永英明をハスキーじゃなくしたような、と言えば分かってもらえるかな。
ホント、プロです、って言われてもおかしくないレベル。

でも…でもね、いつも、“上手いなぁ”、で終わっちゃう。

癒されるような優しくて甘い声、
でもそれを越える何かがない。
エネルギーとかオーラとかが感じられない、
毒がないと言ってもいい。

ともかく、何かが足りない気がする。

何度か彼らの演奏を耳にしたけど、
毎度バラードばかりなんだよね。

確かにあの声はバラード向きだと思う、
声を活かすためには最善な選択なんだけど、
声を活かすだけが歌じゃねぇだろ、って思う。

恐らく歌っている彼も、自分の声の良さを分かって歌ってると思う。
でも、声の良さに頼りすぎなんじゃないかな。



音楽は美しいだけでも許される。
音が美しいだけでも受け入れられる。

でも歌はダメなんだ、綺麗なだけじゃ。
歌は言葉なんだよ、やっぱり。
いい声は必須なんだけど、それだけじゃダメなんだ。
言葉がないと、主張がないと、メッセージがないと。
歌いたいっていういてもたってもいられない、っていう気持ち。

彼らの演奏にはそれが足りない。

人の曲をやってることが多いことも気になる。



せっかくあそこまで歌えるんだから、もったいないよ。
もっと切実に歌いたいって気持ちが欲しいな…。
もっとオリジナルをやればいいのに…。