日記にはさんでおいた
しおりは見たか、

弟よ――

宇宙の塵よりもはかない
オマエの人生が
少しでも平穏であることを祈って作った、

幸運の――

そう――

私が昼寝をするための木陰を
探していた時に偶然見つけた
群生地にあった、

四葉のクローバー――、

ではなく、

カタバミだ。

それは似て非なるもの。

ゼリーと寒天、

葛粉で作った葛切りと
ジャガイモデンプンで作った葛切りくらいの、

全くの別物――。

まあ、

こちらのほうが
四葉が発生しにくい分
見つけた私は幸運だったわけだが。

何より花言葉は輝く心――

私にぴったりだと思わないか――?

フフフv

しかしオマエに渡して
ぬか喜びさせて
その反応をうかがい、

この夏のけだるい午後の
手慰みにしようと思っていたのだが――

さくらに見つかって
それどころではなくなってしまった。

なんでもいつもいっしょに
遊んでくれる夕凪の誕生日に
あげるものを探していたそうなんだが――、

群生地という単語を
四葉のものがたくさんある場所、

と大いに誤解をふくんだ
認識してしまい――

夕凪の年の分だけ
渡そうという話になってしまった。

たくさんの幸運をプレゼント、

というわけだ。

たしかにはっぴーらっきーな
夕凪にはぴったりの贈り物かもしれない。

しかし――

それはそもそも
クローバーではないし、

なにより――

無謀だ――。

それだけの数を集めるのに
どれだけの時間、

草原をはいまわる必要が
あるだろうか――。

もちろん――

どれだけ長い間探しても
見つかる保証はどこにもない――。

しかも太陽が
いよいよ地球を飲み込み、

宇宙の消滅を迎える前に
私たちを滅ぼしそうなほどの
威容を誇っている。

幼いさくらを外に出し続けるわけには
いかないだろう――。

ならば――

わかっているな、
弟よ。

共にクローバーの群生地を見つけ、

可能ならば四葉の生えている株を
見やすいところに集めるのだ――。

どうせ時間など有り余っているだろう?

ならば――

この宇宙が終わるまでの
わずかな時間のその一部を、

この姉に捧げるがいい。

そうそう――

クローバーの花穂には
強壮作用があるらしいぞ。

クローバー探しによって得た、

水面に浮かぶような心地良い
疲労感に満たされた体に、

クローバーによって
今度は元気を得て――

夏の短い夜の間
オマエを存分に可愛がる――

というのも悪くはないv

どうだ――?

時間だけでなく――

その身も、

私に捧げてみないか?

フフフッ――vv

-あとがき-
べびプリ日記風SS
カタバミの方は食べちゃダメだった気がする