さっきはありがとな。

帰り道のこと――

前にいたのが
オマエで助かったよ。

盛大にぶつかっちゃったけど
ケガとかないよな――?

こっちは大丈夫。

どこもぶつけてないし、

こけそうになったのもの、

本当にほどけた靴紐を
踏んじゃっただけだから、

心配しないで。

それにしても――

横着して体育のスニーカーで
帰ってくるんじゃなかったよ――。

だって革靴って
歩きにくいじゃないか。

それにぎりぎり間に合いそうな
信号にダッシュするときとか、

脱げそうになるし――。

あ、これはチビたちには
ナイショな?

真似したら危ないし。

フフフ――。

それからアーケードのベンチまで
わざわざ移動したよな――。

ほら――

私って細かいこと苦手だから、

靴の紐なんかは
落ち着いてちゃんと結ばないと
すぐにまたほどけちゃうんだ。

でも別に不器用とかじゃ
ないんだぞ!

剣道の面みたいな
大きい紐なら簡単に、
しっかり結べるんだ。

道着の帯だって
練習中にほどけたこと
一度もないぞv

――これ帰り道でも
言ったっけ――?

そうそう、

それを言ったら
オマエにバカにされてる気がして、

それならオマエは
ちゃんと結べるんだろうな?

だったらこの靴紐――

家までほどけないように
結べるよな――?

って――。

フフ――

あの時はおかしかったな。

早速ベンチを発見して、

じゃあよろしく――

って言ってもオマエは
立ったまま、

それから
スカート――押さえてろ、なんて。

まだそんな細かいこと
気にしてたんだなv

中なんて見えなかったろ――?

……

結局観念したオマエは
バッチリ靴紐を結んでくれた。

絶対前後反対にして
縦結びにしちゃうと
思ったのになv

それからついでに
反対も結び直してもらって――。

うん――、

そっちもバッチリだったv

ありがとっv

えへへ――v

って思わず
自分でもこんな笑い方
出来るんだって思うような
声が出ちゃって――。

オマエは不思議そうな顔してたっけ。

その時はなんとなく
恥ずかしくてごまかしちゃったけど、

変なこと考えてたのが
顔と声に出ちゃったかな――。

今思うと
気の迷いだった気もするんだ、

あんなこと考えたの。

きっと忙しく上がり下がりする
気温につられて、

気持ちもふらふらしてて――。

でもせっかくだから
日記には書いておくよ、

あの時の私の気持ち――。

私の足元で――、

手袋を脱いで
かじかみ始めて
少し赤くなった指で――

ヒザが地面について汚れても、
耳が痛くなるような
冷たい風が吹いても、

全然気にしないで
私のために一生懸命な
オマエを見てたらさ――、

なんか自分もユキたちみたいな
小さな妹になったように
思えてきて、

それで――

私――感じちゃったんだ。

お兄ちゃんっていいな――

って――。

-あとがき-
べびプリ日記風SS
雪への備えは大切ですね……