キミも知っての通り、

諦めたのか
それとも明日一日にかけるのか――

夕凪姉たちは
宿題を忘れ、

おやつをかけた
勝負にいそしんでいました。

後々発破をかける
氷柱姉の甲高い声を
聞くことになるのかと
思うと少し憂鬱です。

星花姉もどこかそわそわと
落ち着かない様子で
夕凪姉を見ていますし、

家中の雰囲気も
どこか緊迫の空気が
流れ始めたように思いますが――

宿題を計画的に
処理できる段階は
とうに過ぎていますので、

箱を開けるまでもなく
シュレディンガーの猫の
末路は知れました。

後は箱を開けて
事実を結果として
受け入れるのみです。

……

私も念のため、
宿題、特に自由研究の見直しを
してしまいましょう。

不具合があれば
明日修正出来るように――。

観月やキミの視覚に
関する自由研究は、

興味的にも
確認項目の数的にも

この夏中に終わる
課題ではないとの判断を
下しましたので――

今夏はちょっとした工作を
提出することにしました。

電池で稼働する蓄音機を
作成してみたのです。

音とは物体を通して
伝わる力学的エネルギーの
変動のことであり、

通常空気を媒質として
私たちの耳に届きます。

空気は振動によって
エネルギーを伝搬しますが、

これを物理的に――

今回は溝の凹凸として
媒体に記録させれば、

音声を形として残すことができます。

もちろんその逆、

媒体の凹凸を
空気の振動に変換すれば、

音声を再生することが
できます。

記録媒体には
ビニールの下敷きを
利用しました。

お披露目と
学校で流すための
サンプルディスク作成もかねて、

家族の声を
録音してきたのですが、

キミの分がまだでした。

お願いできるでしょうか?

私の名前等
当たり障りのない言葉を
2,3言いただければ――

はい、ではどうぞ――

……

――本当に名前だけですか?

いえ、こちらとしては
編集の手間が省けました。

さて――

このディスクには
今録音してもらった、

吹雪――

の前の部分に
キミがおやつ時に言った、

夕凪と立夏なら
庭でバトミントンの
試合しているよ。

というフレーズの一部が
録音してあります。

どのようなサンプルボイスに
なっているか、

試しに聞いてみると――

……

あっv

これは想像以じょ――

――う――

に――

……

失礼しました。

少し刺激が強すぎたもので、

短絡しかけました。

サンプルの音声を
集め始めた時に、

音は空気を震わせるものだけど、
言葉は心を震わせるものなのよ。

きゅんv

といってキミへの想いを
訥々と録音し始めた
春風姉の言葉の意味が――

少しわかった気がしますv

しかし――

このディスクは
サンプルとして
小学校に持ち込むにはいささか――

イタズラが過ぎますね。

部屋に厳重保管
することとしましょう。

摩耗による劣化防止の措置も
考えないといけませんね。

フフフ――v

-あとがき-
べびプリ日記風SS
最終チェックはだいじです