兄じゃ!


ちょうどよい所におったのう――


手すきなら、
わらわを思い切り抱っこするのじゃ!


……


おー、
やはり兄じゃの抱っこは


天にも昇る心地よさじゃv


体がぽかぽかと、
満たされるの――


……。


――うむ、
実はの、


今宵はキュウビめがそばにおらんので――


少々心細かったのじゃ――


まったく――
兄じゃ、聞いてたもれ!


今日はキュウビと
裏山の祠まで出向いて遊んでおったのじゃ。


あやつめ――


そこらの虫や魍魎を追って
普通の仔犬のように駆けまわり、


逢魔が時を待たずして
疲れはてて眠ってしもうた。


ひとまず連れ帰ったはよいが、


あんまり気持ちよさそうに
眠っておるから、


夕餉の間も放っておいたが――


今宵は風邪のヒカル姉じゃでも
食べやすいようにとの気遣いから、


特製お揚げのきつねうどんじゃったろ?


普段なら借体や変化で
キュウビに譲るのじゃが
そうもいかず――


あやつが目覚めて匂いで気づいた時には
後の祭り。


哀れキュウビは
すっかり拗ねて、


一目散に駆け出したのじゃ!


後を追おうにも、
気づけば外は雨。


止むのを待っておったら、


夏の長き日が嘘のように
あっという間にぬばたまの闇夜じゃ。


雨のせいか、
それともキュウビがおらぬせいか――


今宵の闇は夏のように濃密で
冬のように静かに張り詰めておるように感じる。


キュウビの抜けた
我が身の虚を


無数のもののけ共が
我先にと犯そうとしているような

嫌な予感がして――


わらわ、表に踏み出すことが出来んのじゃ。


キュウビがおらぬだけで、
こんなにも気弱になるとは


情けないことじゃ――


だから兄じゃ、
それでもキュウビを探しに行きたわらわを――


どうか守ってたもれ。


そして兄じゃの愛で――


分かたれた我が半身を
わらわと結びつけてたもれ。


なに、難儀なことはありはすまい。


兄じゃが探してると知れば、
キュウビの方から飛び出してくるじゃろうしの。


何故かと
野暮を問うでない。


わらわと同じく
キュウビめも――


きつねうどんより何よりも――


兄じゃを好いておるからじゃv


-あとがき-

べびプリ日記風SS
この二人は喧嘩したりするのかな?