どうしたものかのう――


いや、わかっては、おるのじゃ――


きゅうびから聞いておる、
昨夜の氷柱姉じゃのこと。


十三日の金曜日など、
遠い異国の厄日なれば
わらわたちには関係なく――


されどここは豊葦原瑞穂の国、
古来より言霊に彩られてまいった。


誰かが不安を口にすれば、
たちまちそれは力を帯びて
禍を成し、


あるいは弱き魍魎どもの
付け入る隙となる。


まして、大勢の者どもが
不吉と感じるならば、
招く闇も大きくなろうと言うものじゃ。


そんなわけで、
昨夜は不吉の言霊で力を得、
図に乗った魍魎が
我が家でのさばらぬように、と
きゅうびに見回りさせておったのじゃが――


裏目に出たの。


普段はまるで鈍感な
氷柱姉じゃに
きゅうびの足音を聞かれるとは――


そちにもあるじゃろ?
妙に外がざわめいておるように
思えたり、
不思議と先のことが
わかるように感じた日が?


何者も、
力に波があっての?


幾年かに一度くらい、
力が高まるのじゃ。


そして、氷柱姉じゃにとって、
それは昨日、
といったところじゃろう。


今朝からきゅうびが
何度も氷柱姉じゃの前で
首部を垂れても、


まったく気づかぬくらい
普段は鈍いというのに――


何とも間の悪いことじゃ。


今週の夕凪姉じゃではないが、
わらわはとても憂鬱じゃ。


今のところ沈黙を保っておる
氷柱姉じゃではあるが、
不意に我が家に
魍魎がおるなどど口に出されては、


この家を護る、
わらわの沽券に関わる!


それにさくらあたり、
お化けのいるおウチに帰りたくない!


となるのが目に見えておる。


かわいそうに――


そうなる前に、
なるべく早いうちに
氷柱姉じゃに事の仔細、
言い含めねばならんのじゃが――


やれやれ、
力の頂点ですら
きゅうびの姿が見えず
足音しか聞こえぬ姉じゃに、


如何様に告げれば良い?


これ、そち、
何か良き知恵はないかの?


わらわ朝から頭をひねっておるじゃが、
どうにも知恵が足りん――


あまりにわらわが
鹿爪らしい面じゃったのか、


星花姉じゃが
立夏姉じゃ、夕凪姉じゃに代わって
今度は氷柱姉じゃとわらわが困っておる、
と心配する始末。


ここは兄じゃ、


この難題
片付けてはくれぬか?


わらわはもうお手上げじゃ。


そこなきゅうびのように
おなかを見せて
ごろーん、と
降参のポーズじゃ!


-あとがき-

べびプリ日記風SS
5/13のSS「不眠」の続きです。

金曜の女、こと氷柱に投げっぱなしにするつもりだったのですが、
ちょっと個人的に座りが悪く感じたので続けてみました。

おかげで一人だけ四週目に……