泣いてしまった。
閉じたあとも、しばらく絵本に合掌していた。
大西暢夫さんの
人間の営みを見つめる写真絵本には
静かに、
確かに
深く、、、ゆっくりと染みていくものがある。
写真絵本
『ひき石と24丁のとうふ』は
岩手県二戸市の小山田豆腐店
90歳のミナさんを追った写真絵本。
40ページの本文の中に、
表、裏見返しに、
カバーに、
カバーの折り曲げ部分の小さなスペースにも
大西さんの
溢れる想いの写真が載せてある。
二倍速、三倍速のスピードの時代にあって
自分の気持ちが迷子になりそうなときに
大西さんの絵本が語るものは
私の道標だ。
人として生きる上で
忘れてはいけない想いに、、、
絵本を抱きしめた。
この春
香椎宮の桜並木の片方が伐採された。
伐採される桜の木も
伐採されずに残った桜の木も泣いていたと
お話されている方も 涙ぐまれていた。
満開の桜を
伐採しなくてはならなかった仕事は、
どんなにか辛かっただろう。
だが、
伐採が、仕方ないことだったとしても、
せめて、
せめて、
せめて、
花が散るまで、
待てなかったのだろうか?
心を無くしてまで
急がなければならない時代に
なってしまったんだろうか?
昨年、
東図書館での大西さんの講演の機会に
残念ながら行けなかった。
絵本
『和ろうそくは、つなぐ』
の出版にあたっての記念講演会
だったように思う。
『ここで 土になる』
が、
私と大西さんの絵本との出会い。
ダム建設で揺れた、熊本県五木村。
そこで暮らし続けた 老夫婦の
いのちの記憶の絵本
大西暢夫作 2015年10月25日初版 アリス館
草をむしっている老父の写真に
添えられた大西さんのことばは
今も 刺さっている。
「畑に石がなければ、
すぐに種を撒くことができるからな」
まるで、
つぎにここを耕す人に、
つなげようとしているようだった。
日々を生きていくことは、難しい。
だけど、
それだけで、尊い。