ゲームというのは最低でも、『目標の設定』『成功への挑戦』『成否の確認』の3要素を含まないと成立しないと僕は考えています。
 例えば、なんの目標もなく漫然と遊んだ場合の『シムシティ』とか、そもそもスコアの概念が存在しない『Wii Music』とか、クリックしてれば進む『対魔忍ユキカゼ』とか。どんなに面白かろうと、表現方法として成功していようと、それはゲームとは呼べないのではないかと思うのですよ。

 なので、これから紹介する作品もやはりゲームではないのですが。でもあまりに面白かったし、とても示唆に富んでいるので、ここに載っけておきたいと思うのです。

 そんなわけで、『Japanese School Life』です。
 英語圏から日本の高校へやってきた主人公が、交換留学の一年間で女の子と仲良くなりつつ日本文化に触れるという内容のボイス付き紙芝居になっています。
 STEAMにおいて、日本文化紹介ゲームというのは小さいながらも一つのジャンルとして成立しているようで、同じタイプのギャルゲーは複数存在します。けれど、その中でも本作品はひときわ異彩を放っています。

 突然ですが、日本人のあなたは、門松を何故飾るのか明確に答えられるでしょうか。端午の節句に菖蒲を飾る理由が、中国と日本で違うのをご存知でしょうか。
 このソフトに詰め込まれている『日本文化』とは、主にその種のものです。かわいい女の子二人がボイス付きで、日本人なら知っていて当たり前のこととしてぶっ込んできます。
 カラオケやコンビニに関する知識や普通の異文化ギャップも出てきたりしますが、彼女らの圧倒的民俗学知識の前には霞んでしまうことでしょう。

 他の日本文化紹介ゲームでは、こういった役に立たない情報はほぼ出てきません。そもそも日本人も知らないような専門知識を、入門者の外国人に教え込む理由がありません。
 つまりこのゲームのシナリオを書いた人たちは、情報の取捨選択に失敗しているのです。もっと言えば、どの情報が日本における『常識』か判別することができず、優先順位を付けることができなかったのです。
 読み進めているうちに、あなたはこう思うことでしょう。「シナリオライターは日本に来たことがないのだろうか?」と。少なくとも僕には、長期滞在経験者がメインスタッフにいるとは思えません。

 となると、作中に登場する圧倒的日本知識がどこから来たものなのか疑問がわいてきます。
日本で生活しても到底学べないようなものばかりなので、何らかの書物やインターネット上の情報をそのまま引っ張ってきたようにも見えます。
 日本滞在経験の少ない勉強熱心な誰かさんが、書物と首っ引きで考えたらこんなおかしなゲームになってしまった。これが僕の推理です。

 いくら本を読んでも、ネットで情報を漁っても、本当の意味で異文化を学ぶことなんてできない。
 知りたいならばそこに住め。教訓を得ようとするならばこんなところです。

 けれど、教訓なんてクソくらえなのです。
 外国人が伝聞から考えた忍者をご存知でしょうか。とてもファンタスティックです。
 SAMURAIを見たことがあるでしょうか。日本人には到底考えつけるものではありません。エキサイティングにもほどがあります。

 知らないが故に、知らないからこそ生み出せるものがあるのです。このゲームもまた、日本人の考えうる範囲を超えています。
 女子高生が菱餅の起源について延々語るゲームを、日本人に生み出せるでしょうか。

 半端な知識から生まれたツッコミどころの塊。机上で調べに調べて実地調査を怠ったが故に生まれた奇跡。
「そんなん普通の高校生が知るわけねえだろ!」そんなひと時をあなたに。

 

 

STEAM

 とても面白いパズルゲームをプレイしました。友人にも勧めました。
 ところが、揃って「難しすぎる」「訳が分からない」「理不尽だ」といった感想が返ってくるのです。
 このゲームで詰まってしまったフレンズの中には、IQが僕より30も上の人だっているのです。これはもう、知能以外の何かが影響しているのではないかと思えてきます。

 そんな感じで、文系にお勧めというよりは理系ゲーマーだと理不尽さを感じるゲーム、『Baba Is You』の紹介です。

 形式としては比較的スタンダードなステージ選択制のパズルゲームです。

 狭いマップの中で倉庫番方式に主人公やオブジェクトを動かしていく馴染み深い操作ですが、英単語ブロックを押して簡単な文章を作り、ルールの方を書き換えていくのが特徴です。

 例えば、大抵のステージには『wall is stop』という文章が置いてあります。これは、『壁の中を通ることはできません』というルールです。けれど、この文章はただの単語ブロックの集合なので、どこか押してやれば崩すことができます。
『stop』を動かして『wall is』にしてしまえば、主人公は壁を通り抜けることができるようになります。文章化されているものだけがルールとして通用する。そんなゲームです。

 難易度としては異様に難しいステージもありますが、ステージクリア制とステージ選択制をうまく組み合わせたシステムにより、エリアの中の半分ほどのステージが解ければクリア判定になります。解けないステージを後回しにできるという意味で優れています。

 理系ゲーマーに不評な原因としては、文章を扱うゲームだから…というのを最初に考えたのですが、そもそも文章だってロジックです。数式なら解けるけど英単語になると途端に解けなくなるのが理系、というのはさすがに理屈として無理があります。


 他のパズルゲームと大きく異なる点としては、そもそもロジックを求められるステージが少ないというところでしょうか。
 基本システムがドンとあって、それに従って手元にある選択肢を試していくというのが通常のパズルゲームだと思います。しかしこのゲームの場合、そもそも正解が手元にない、思考の死角に隠されているパターンが非常に多いのです。
 手元にある何かを組み合わせて論理で解決するのが理系なら、思考を飛躍させて手元になかったものを引き寄せるのが文系です。少なくともこのブログではそう定義します。
 そういう設計になっている以上、理系的解法では、すべての選択肢を試した時点で手詰まりになってしまいます。理不尽と評されがちなのは、そういったところではないかと思っています。

 ステージ数も多く歯ごたえがあり、ロジック系パズルは飽きた、あるいはひらめき力に自信があるという方にお勧めです。


ババイズユー

 文系だの理系だのを持ち出してまで紹介したいと思った筆頭が、このゲームです。

 

 ジャンルは、運営シミュレーションとかストラテジーになるかと思います。
 プレイヤーは神様視点で、3~10人程度の小さな集落を運営します。
 各キャラクターに命令を出してアイテムを集めさせてクラフトし、気候や自然災害に耐えつつ外敵も撃退し、集落を発展させていきます。一応の最終目標は宇宙船の建造です。
 RTSっぽい外見ですが、時間を止めることができるのでリアルタイムではありません。対戦要素もありません。

 この手のストラテジーというと大抵は、効率的なリソースの貯め方や建造物を作る順番、優先度の高い研究、効果的な防衛施設の配置など、数字と効率計算に強い人ほど上達も早くなるよう出来ています。

 このゲームも例外ではなく、『理系』の人の方が圧倒的に有利です。
 では文系ゲーマーに不向きなのかというと、そういう訳でもないのです。そもそも上達することと楽しむことは同義ではありません。このゲームは、極上の物語ジェネレーターとしても機能するのです。

 先ほど、各キャラクターに命令を出して自由に操作できると書きました。確かに、行動はいくらでも指示できます。しかし、心まで操ることはできません。
 キャラクターにはそれぞれストレス値が存在し、あまりに精神状態が悪いと、しばらくの間操作不能になって不利益な行動を繰り返すようになります。
 それに加え、全員がそれぞれ厄介な嗜好や性格、悪癖や依存症、そして独自の人間関係を持ちます。少し目を離せば、簡単に発狂してしまいます。

 操作キャラのストレス値をためすぎてペナルティを受けた。こまめに心情を確認し、管理を徹底しよう。理系ゲーマーの反応を想像するなら、こんなところでしょう。

 しかし僕らは、想像と飛躍を武器にする文系ゲーマーです。そこにストーリーを見出すことなど造作もありません。

 

 例えば、女性に殴りかかった男の過去を確認すると元夫で、人間関係を見ると未だ未練たらたらだったりするわけです。その素行では三行半も納得です。
 優秀なハンターだった男が、いきなり暴れ出したこともありました。彼はふとした出来心で敵の落としたドラッグを口にしていたのですが、いつの間にか禁断症状が発生するレベルの依存症になっていたのです。
 女性比率が低いはずなのに、全く男の影がない女の子がいました。彼女は男嫌いで、男と見ると罵声を浴びせていました。作業場がちょうど人通りの多い場所にあったので、男性と会話する機会も多く、人間関係を確認するとえらいことになっていました。
 働き者の女の子がいました。あまりに喜んで働いてくれるので、僕は彼女に平均の1.5倍ほどの仕事を押し付けました。1週間後、虚ろな目をして全裸で徘徊する彼女の姿がありました。性格を確認してみると、ノイローゼ持ちでした。
 女性メンバー5人と交際して、毎回一晩でフラれてしまう男がいました。ああ、夜がダメなんだなあと共感せずにはいられません。彼は元カノの結婚式に出席しましたが、直後に精神を病んで数日寝込みました。システム上は結婚式に参加すると心情にプラス補正が入るはずなのですが、そのタイミングで決壊してしまったのは今でも謎です。

 感覚としては、『ガンパレードマーチ』の日常パートを少し過激にした感じでしょうか。
 感情移入が難しそうなら、登場人物に友人やアニメキャラの名前なんかを付けると親近感がわきます。
 難易度が高いので、バニラだとそうそうクリアできるとは限りません。けれど、「悪かった小林! 今度は仕事の量ちょっと減らすから! 戻って来い小林!」ができるゲームは他に存在しません。

 ストラテジーをやろうと考えている文系の方にはかなりお勧めです。理系の方も十分楽しめると思いますが、理系向きのストラテジーは他にもたくさんありますので、これが絶対的に面白いとも限らないです。

 

リムワールド

 ある時、僕のお勧めゲーム一群を紹介するにあたって、ゲーマーというものを分類してしまえばやりやすくなるのではないかと思いつきました。

 考えに考えた末、「文系」か「理系」かで大雑把に分けてしまうのはどうかという事になったのです。

    ~これが理系ゲーマーだ!~

 理論構築が得意で、仮説を検証するのが好き。
 ゲームキャラが数字の塊に見える。
 短期的な勝敗よりも、勝率を重視する。
 ゲーム内リソースが最も効率よく増える、合理的な行動を取ろうとする。
 ゲーム内で発生しうる問題には先回りして対処する。
 敗北した際は原因を追究し、きちんと対策を講じる。
『船幽霊を用いた水力発電』と言われても、ビジョンが浮かばない。あるいは「船幽霊なんて存在しない」と返す。


    ~文系ゲーマーのすべて~

 空想するのが得意で、話を飛躍させるのが好き。
 ゲームキャラが一個の生命体に見える。
 勝ったり負けたりするたびに一喜一憂できる。
 こまめなリソース管理をあまりしたがらず、気が付いたら何かが致命的に不足していることが多い。
 ゲーム内で発生した問題には泥縄的に対処する。
 敗北した際は、理屈よりも先に割と本気で悔しがる。
『船幽霊を用いた水力発電』と言われると、ひしゃくで水車に水をばっしゃばっしゃとかけ続ける船幽霊の姿が思い浮かぶ。


 違うのです違うのです。決して文系を馬鹿にしてやろうとかそういう意図ではないのです。そもそも僕はド文系なのです。
 
 これは、学問の得手不得手ラベリングをそのままゲーマーに適用してやろうという試みではありません。
 ただ、リリックを好むゲーマーとロジックを好むゲーマーを無理やり分けてしまえば、僕はゲームを紹介しやすくなるではないですか。
 ここでいう文系理系の分類は、当然ながら他の場所で通用するようなしっかりしたものではありません。
 また、実生活における性格や職業、学業や知能なんかとも無関係です。文筆業の友人がいますが、彼のゲームとのかかわり方は、理系ゲーマー以外の何物でもありません。あくまで、どういう姿勢でゲームをする人かという話です。

 この方法がやりやすくなかった場合、僕は予告なく逃げます。また、文系理系の定義を変更する必要が出た時は、あまりこだわりなく変えてしまうかと思います。