音楽の窓から ~ディロルフ幸子ピアノ教室~

音楽の窓から ~ディロルフ幸子ピアノ教室~

長年ピアノを教えてきて、感じたことを綴っていきます

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ピアノを教え始めて45年以上が経ちます。日本でも、海外でも学ぶ機会があり、たくさんの先生の教えを受けました。ジュリアード音楽院、ロンジー音楽学校、カーネギーメロン大学他。アメリカでは住まいのあるニューヨークだけではなく、各地で学びました。そこでは、多くの先生方や世界中からきたクラスメートとの出会いもありました。

 

そこで私が学んんだこと。それはもちろん音楽もそうなのですが、音楽以外のこともいろいろありました。私が学んだことの中に、子育てのヒントになることがあるかもしれません。

 

海外と日本の大きな違いは、まず安全を確保することが一番大切だという姿勢だと思います。学校の入り口は、どこも大抵鍵がかかっています。警察官あるいは警備員がいるのが普通です。学生証を見せなければ中に入れなかったり、専用のカードが必要だったり、というように警戒は厳重です。

 

授業では、自分の意見を持つことの大切さ、クラスマネージメントの方法、世界中から異なる人種や宗教の人が集う中で、他人を尊重すること、違いを恐れないこと、人より目立つにはどうすれば良いのか(笑)、など、様々なことを学びました。

 

個人でもグループでもレッスンを受けました。今はなき、世界的に有名な先生方もいらっしゃいます。私がアシスタントでクラスに入っていた先生は、80を過ぎても現役で、引退されるまでお手伝いさせていただきました。

 

先日、ダルクローズ・リトミックの日本支部を統括している先生と電話でお話しした時に、「向こうでの経験を、日本に還元して」と言われました。今日は、そんなことをブログでお伝えしようと思います。

 

私がピアノのレッスンの時、弾き終わった生徒さんに最初にすることは、間違いを指摘することではなく、「どうでしたか」と生徒さんに尋ねることです。「自分の意見を言うこと」「自分を客観的に見ること」は国際人として最も大切です。先生に丸投げするのではなく、まずは自分でどうだったかを、考えてみるのは大事です。

 

とかく日本人は真面目なので、意見を言う時に「間違っていたらどうしようか」と考えます。でも、感じたままを言って良いのです。そこには、観察力や事故を評価する力、意見をまとめる力など様々な能力がついて回ります。それは、自分自身を鍛えることにつながります。ピアノのレッスンが、そういった意見を言う訓練の場になることを、私は応援します。

 

特にグループの時は、先に言ったもん勝ちです。後から言う人は、今までの人が言わなかったことを探さなければなりません。だから、先に言ったほうが楽なのです。

 

例えば、ニューヨークの即興演奏のクラスで、一番に弾けば非常にシンプルなものでも何も言われません。後になればなるほど、前の人とは違ったものを求められるので、シャープをつけたり、フラットをつけたり、拍子を変えたり、など、新しい要素を付け加えなければならなくなります。つまり、だんだん難しくなるのです。

 

私の質問に対して、生徒さんからは様々な答えが返ってきます。私は全てを受け入れてから、それに対して共感したり、質問したりします。「いつも通りできた」「いつもはもう少しうまく弾けるのに、、、」「一生懸命練習したから、難しいところもうまく弾けた」「先週の間違いが良くなった」などなど。自分で自分の演奏を振り返ることで、客観的に見る訓練ができます。

 

生徒さんの答えに対して、私はまた質問をします。「どうしてそうなったのか」「どこが難しかったのか」「どうして難しいのか」「では何が必要なのか」などなど。

 

私はできる限りこちらから指摘するのではなく、自分で気づいてもらえるように誘導していきます。生徒さんに気づきを与え、私に話してもらうようにしていきます。「自分の口で説明できる」、ということは非常に大切です。

 

音やリズムの間違いにも、なるべく自分で気づいてもらえるようにします。それは結構時間がかかります。「この音が違っているよ」とか、「ここのリズムは正確ではないよ」と先生が指摘して、見本を弾いて見せるのは簡単です。でもそうはしないで、本人に気づいてもらえるように、いろいろな方法で正解に導いていきます。

 

誘導するためには、こちらが段階を踏んで的確な質問をする必要があります。答えを引き出すためには、先生の側には、それ以上の経験と知識が必要なのです。

 

他にも、こんな質問もします。「一週間は何日あるの」「先生に会えるのは、そのうちの何日」「残りの6日は、どうしたら良いの」などです。そして、「残りの6日は、自分が自分の先生になってね」と言います。

 

自分で自分のピアノを、聴く、評価する、練習のプランを立てる、導く、など、自分が先生になって、よりよく弾けるために頭を使う、そういったことも、生徒さんが自覚して練習していくことが大切だと思っています。