安倍自民党よ、圧勝に驕るなかれ | 『月刊日本』編集部ブログ

『月刊日本』編集部ブログ

日本の自立と再生をめざす言論誌

 弊誌1月号22日より店頭販売を開始しております。


 今月号では「安倍自民党よ、圧勝に驕るなかれ」と題する特集を組みました。


 安倍総理は「アベノミクス解散」と銘打ち、選挙では経済政策を前面に打ち出していました。しかし、本来であれば集団的自衛権の解釈改憲や特定秘密保護法、沖縄の基地問題、原発再稼働など、他にも争点はたくさんありました。


 憲法学者の小林節氏は集団的自衛権、さらにはそれを前提とした日米ガイドラインの見直しを厳しく批判しています。小林氏は「集団的自衛権の閣議決定が憲法に矛盾するものである以上、安倍総理は立憲主義をぶち壊した独裁者だ」とした上で、「海外派兵は新しい敵を作り、戦線を拡大し、自国を手薄にしますから、安全保障を強化するどころか、むしろ『明白な危険』を自ら呼び寄せるリスクが高い」と指摘しています。


 安倍総理が集団的自衛権の解釈改憲に踏み切ったのは、対等な日米関係を構築するためだと言われています。しかし、元内閣官房副長官補(安全保障担当)の栁澤協二氏は、「対等な日米関係」とは一体何を意味するのか不明であり、アメリカとイコールパートナーになりたいというのは安倍総理の情念にすぎないと批判しています。栁澤氏はその上で、国家にとって重要なのは対等性ではなく国益だと指摘しています。


 この指摘は極めて重要だと思います。アメリカと本当の意味で対等な関係を築くのであれば、アメリカと同等の経済力と軍事力が必要ですが、それは不可能です。我々は現在置かれている状況を踏まえ、情念ではなく国益の最大化を目指さなければなりません。


 今回の選挙で自民党は圧勝しましたが、唯一選挙区で全敗したところがあります。沖縄です。沖縄では明らかに安倍政権に対してNOが突き付けられました。


 翁長雄志新知事の誕生を始めとして、沖縄のこうした動きは一般的に左翼の運動だと言われています。しかし、哲学者の山崎行太郎氏は、薩摩藩による琉球侵略や明治政府による琉球処分の歴史を考えれば、沖縄で反日的な運動が起こるのは当然であり、あれこそ沖縄の誇りを守りたいという保守の運動だと指摘しています。


 また、山崎氏は、安倍総理がアメリカによって作られた戦後レジームから脱却したいと考えているのと、沖縄が米軍基地を追い出したいと考えているのは同じことだとし、沖縄の気持ちを理解できない人間に対米自立を唱える資格はないと批判しています。


 第三次安倍政権に期待できることと言えば日ロ交渉でしょう。11月に行われた日ロ首脳会談も含め、安倍総理は第二次安倍政権になってからプーチン大統領と7回も首脳会談を行っています。中国の台頭に対応するためにも、日本はロシアと平和条約を締結する必要があります。


 もっとも、安倍政権が現在の政策を続けている限り、平和条約を締結することはできません。元外務省欧亜局長の東郷和彦氏は、日本政府がこれまでのようにG7の対ロ制裁の方針に従いつつ、ロシアに対しても良い顔をするという「コウモリ外交」を続けていても、ロシアの対日不信感を大きくするだけだとし、「ロシアにとってウクライナ・クリミアの問題は、国家の存立を懸けた極めて深刻な問題です。彼らは日本に対して、その深刻さに見合った対応を求めています」と指摘しています。


 また、一水会代表の木村三浩氏は、日ロ外交を進めるために日本政府は対ロ制裁を緩和する必要があると指摘しています。木村氏はさらに、「歴史的に見ると、日本とロシアには西洋のインパクトを受けてきたという共通点があります。スラブの大地からのパトリオティズムと敷島の大和心は、武道精神などからも相互理解が可能です」と述べています。日本とロシアが歴史的に似たような境遇に置かれてきたという事実は、いくら強調しても強調しすぎることはないでしょう。


 その他にも、京都大学教授・佐伯啓思氏の戦後70年を見据えたインタビュー「戦後70年 アメリカ型システムと決別せよ」や、『デフレの正体』や『里山資本主義』の著者である藻谷浩介氏の講演録「里山資本主義の見据える未来」など、読み応えのある記事が満載です。ご一読いただければ幸いです。(YN)







にほんブログ村 政治ブログへ