中露同盟を阻止せよ | 『月刊日本』編集部ブログ

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日本政府がロシアへの追加制裁に踏み切ったことに対して、ロシア側は失望を表明しました。


4月30日のロイターの報道によると、ロシアは「明らかに外部からの圧力によって取られた手際の悪い措置だ。ロシアとの関係発展の重要性を強調する日本政府の思惑に反している。制裁という言葉によって、われわれとコミュニケーションをとることは非生産的であると強調したい」と述べたそうです。


ここに出てくる「外部からの圧力」とは、明らかにアメリカのことを指しています。ロシアとしては、日本がアメリカに追従して制裁に加わったことは残念だと言いたいのでしょう。


この微妙な発言からも、ロシアが非常に難しい立場に置かれていることがわかります。ロシアは、今回の日本の行動は許し難いものだが、あまりにも日本を厳しく批判してしまうと、日本が完全にアメリカ側についてしまう恐れがあると考えているのでしょう。


ロシア政府は表立っては日本を批判していますが、裏では、何とかロシア側についてほしいと様々な働きかけをしてきているはずです。もちろんアメリカ側も、日本政府に対して様々な働きかけをしているでしょう。これは要するに、アメリカとロシアによる日本の奪い合いが行われているということです。


もちろん日本としては、アメリカやロシアに振り回されず、日本の国益を第一に考えるべきです。


日本にとって最悪の事態は、ロシアが日本との関係に見切りをつけて、中国と手を結ぶことです。日本としては、この「中露同盟」を阻止するためにありとあらゆる手段を講じる必要があります。


もとより、ロシアが完全に中国と手を結ぶことはありません。プーチンにとっては日本よりも中国の方が信用できない国だからです。しかし、日本があまりにもロシア批判をすれば、プーチンは今よりも重心を中国の方に移すでしょう。中国政府も、プーチンが中国側に立つように様々な働きかけをしているはずです。つまり、こちらでは、日本と中国によるロシアの奪い合いが行われているということです。


中露同盟は、アメリカにとっても最悪の事態です。安倍政権としては、過度のロシア批判がいかに危険なことであるかをアメリカにきっちりと説明し、プーチンを日本側に引きずり込むことを目指すべきです。


ここでは、前回紹介した、元外務省欧亜局長・東郷和彦氏のインタビューの続きを紹介したいと思います。(YN)



『月刊日本』5月号より

中ロ同盟を阻止せよ

―― G7によるロシア非難には日本も名前を連ねています。その一方で、安倍政権はプーチン政権と北方領土問題解決に向けて協議を進めているので、ロシアを強く批判することを避けているように見えます。プーチン政権はこうした日本の振る舞いをどのように評価しているのでしょうか。

東郷 先ほど述べた3月18日の演説で、プーチンはアメリカやヨーロッパを批判していますが、日本については何も言及していません。それはプーチンが、日本がG7の決定に従いつつもロシア批判を控えていることを評価しているからだと思います。

 安倍政権のこうした対応は日本の国益にも合致します。G7がここでロシアを強く非難しすぎれば、ロシアを間違いなく中国の方に押しやるからです。

 現に、プーチンは演説の中で、「私たちはクリミアでの私たちの行動に理解を示してくれたすべての人に感謝しています。中国の国民に感謝しています。中国指導部はウクライナとクリミアの情勢をその歴史的、政治的全体像を考慮しています」と述べ、中国の対応を高く評価しています。

 ユーラシア大陸における中ロ同盟は、日本だけでなくアメリカにとっても悪夢です。私は以前アメリカの戦略家であるエドワード・ルトワックと議論したことがありますが、彼はその時、「ロシアと中国が手を結ぶことを阻止することこそ、ユーラシア大陸における大戦略の目標である。そのためにも、日本は北方領土を放棄してロシアと関係を強化すべし」とまで言っていました。

 また、ロシアはイランとの接近もチラつかせています。ロシアの国営ラジオ「ロシアの声」は、ロシアに対する厳しい制裁が行われるのであれば、「ロシア政府は、欧米が嫌がるイランとの経済及び軍事技術協力を拡大する可能性がある」と報道しています。

 ロシアが中国だけでなく、さらにはイランとも手を組むということは、新たな三国同盟が誕生することを意味します。これは国際社会にとって最悪の事態です。G8からのロシアの追放は、ロシアの態度を硬化させることにしかなりません。(以下略)






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