生還か沈没か!激動する日本外交 | 『月刊日本』編集部ブログ

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本誌4月号22日から店頭販売しております。

 

今月号では日米関係、日韓関係、ウクライナ危機など、激動する「外交問題」について議論しました。

 

 日米関係に詳しいロナルド・モース氏(元カリフォルニア大学教授)と稲村公望氏(中央大学客員教授)の対談では、現在の日米関係はどうなっているか、今後どういう日米関係を目指すべきかについて議論して頂きました。ポイントは「日米関係の本質は歴史認識ではない」という点です。

 

モース氏は、アメリカは日本に無関心で、日本もアメリカに積極的なアピールをしていないため、靖国神社をめぐって日米が相互不信に陥るのは当然だとした上で、安倍政権はこれ以上歴史認識問題に深入りすべきではないと警鐘を鳴らしています。「安 倍総理がアジアで主導権を握ろうと思っているのであれば、中国や韓国が仕掛けてくるプロパガンダにいちいち反応するのはやめた方がいい。メディア戦争に巻 き込まれ、歴史認識問題でYES・NOを争えば、日本に勝ち目はありません。事の本質は歴史認識ではなくパワーバランスだということを忘れてはならない」

 

 

一方、稲村氏はTPP参加でアメリカの機嫌をとる意味はないと主張しています。「TPPに参加するこ とで日米関係が深化するなどというのはまやかしです。私は郵政民営化に反対してきた人間として断言できますが、郵政民営化によって一体どれほど日米関係が よくなったでしょうか。一部の資本家による郵政民営化は相互の信頼を失わせ、日米関係をむしろ悪くしたくらいです。経済関係がよくなったからといって政治 関係が良くなるわけではありません。日本はこれを機に、従来のような経済一辺倒の政策を改めるべきです」

 

 安倍総理の靖国参拝は日韓関係にも影響しています。特に日本の保守論壇では「嫌韓論」が高揚していて、両国の溝は深まるばかりです。『保守論壇亡国論』の著者・山崎行太郎氏は、日本は韓国から稲作などの様々な文化を教わり、国の基礎を作ってきたとする常識まで批判する「反韓論の心理と論理」について、こう分析しています。

 

「彼 らが古代にまで遡って日本の優位性を主張するのは、日本が韓国から影響を受けていない『純粋無垢』な国家だと言いたいからでしょう。これは最近の保守論壇 によく見られる傾向で、彼らは『純粋な日本』や『本来の日本』なるものが存在すると考え、そのための根拠を必死になって探しています」が、「たとえ日本が 韓国の影響を受けていたとしても、それを含めての日本なのだから、それはそれとして認めた上で日本の歴史や文化を尊重していけばいいだけの話です。それが できないのは、現在の論壇の思想的レベルが衰退してしまっているからです」

 

 

また「世界大戦の引き金か?」と も危惧されるウクライナ危機については、時事通信社でワシントン支局長・モスクワ支局長・外信部長を歴任した名越健郎氏に話を伺いました。名越氏は欧米を 敵に回したロシアが中国に接近することで、日本が東アジアで孤立する危険があると危惧しています。中ロは来年「反ファシスト戦争70周年記念大会」を共同で祝うことに合意しているため、これは日本にとって半日の逆風が吹き荒れかねないピンチです。

 

「と はいえ、ウクライナ危機は北方領土問題にとってチャンスになり得ます。というのも、仮にロシアがクリミア半島を併合した場合、ヨーロッパの国境線を拡大し た代わりに極東の国境線を縮小することで帳尻を合わせ、国際社会の納得を得ようとする可能性があるのです。国境が変動する時期が最大のチャンスです。我が 国はソ連崩壊という絶好の機会を見逃してしまった失敗を繰り返してはなりません」と名越氏は指摘しています。

 

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