「初めまして、私は久美、これからよろしくね」

 

 

 

 

初めて言葉を交わしたのは、母親の再婚で、新しい父親と彼女が家に

引っ越して来たとき

 

キラキラした笑顔で見るからに優等生な感じ、聞けば私よりも1歳年上の

高校3年生

 

一緒に暮らすとなれば、当然通う高校も私と同じ日向坂高校

 

 

 

 

別に再婚なんて私個人の感情で言えば、しなくてもいいと思っていた

 

新しい父親も姉も別にいらないし

 

しかし、決まってしまった以上仕方ない、私も腹をくくることにした

 

 

 

 

 

「美玲です、よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

彼女との出会いは、そんな春の風がまだ少し冷たい日曜日の昼下がり

 

 

 

 

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やはり、最初に彼女に抱いたイメージは、実際にその通りだった

 

文武両道で、彼女の明るさに惹かれて、なんとファンクラブなるものが

できたらしい

 

部活はいろんな部活から引っ張りだこ、本人は吹奏楽部でトランペットを担当しているけど、たまに野球部の助っ人に行っているみたい

 

 

 

 

 

「久美は、なんでもできるからすごいね♪」

 

「久美って、キャプテン感があるよね、頼りになるな~」

 

「いやぁ、ささくはすごいな」

 

 

 

 

 

 

彼女の同級生、彼女の担任、口をそろえて彼女を褒めたたえる

 

元より彼女の人懐っこさもあって、転校生であってもすぐに周りに

打ち込めたようだ

 

 

対して、私はよく言えば大人しい、悪く言えば地味

 

勉強も並で部活には所属していない

 

 

 

 

私と彼女を比べる人はいないが、否が応でも私自身は比べてしまう

 

何もかもが彼女に比べて劣っている

 

 

 

そんなネガティブなことばかり考えてしまう、じめじめしたある夏の日の夕暮れ

 

 

 

 

 

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「もう、私のことはほっといてよ!!」

 

 

 

 

 

 

部屋着のまま、家を飛び出した

 

親からいろいろと言われたけど、内容はほとんど覚えていない

 

ただ、覚えているのは姉と比べられたこと

 

私がどうあがいたって、彼女に敵うわけない

 

 

 

 

溢れそうになる涙を堪え、どこへというわけでもなく日が暮れた街を

走っていく

 

薄着のせいで、寒さが身を貫いてくるけれど、戻りたくない

 

 

 

 

 

気が付けば、小さいころよく遊んだ公園にいた

 

誰もいない公園は、まるで私の心を表しているみたい

 

ベンチに座って、顔を伏せて気持ちを落ち着かせる

 

なのに・・・

 

 

 

 

 

 

「よかったぁ、ほら、風邪引くよ」

 

 

 

 

 

 

声がして目線を上げると、息を切らして私の上着を持っている彼女

 

私のことなんかほっとけばいいのに、なんでわざわざ来たのか

 

 

 

 

 

 

 

「どうして、来たの? 私のことなんかほっとけばいいじゃん」

 

「馬鹿なこと言わないでよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

パシンと頬を叩かれたかと思うと、次の瞬間強く抱きしめられた

 

一瞬何が起きたのかわからなかったけど、彼女の鼻声が聞こえ

泣いているのだと気づいた

 

 

 

 

 

 

 

「今まで美玲の気持ち考えてなくて、馬鹿なお姉ちゃんでごめんね」

 

「別に許してくれなくてもいい、でも、大切な家族、妹だから」

 

 

 

 

 

 

 

 

初めて聞いた姉の気持ち

 

思い返せば私自身、姉に対してちゃんと向き合ったことはなかった

 

一人で勝手に比べて、気持ち抱え込んで、劣等感を感じて・・・

 

 

 

 

 

でも、姉の言葉に少し救われた気がする

 

風が吹いて寒いけど、姉の優しさが感じられた、そんな月が綺麗なある秋の夜

 

 

 

 

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「「行ってきます」」

 

 

 

 

 

 

2人揃って学校に向かう

 

ちょっと前だったら、一緒に行くなんて考えられなかった

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、寒いね~手袋してきて正解だよ(笑)」

 

 

 

 

 

 

白い息を吐き笑いながら見せてきた手には、私とおそろいの手袋

 

そんな彼女につられて私も笑ってしまう

 

 

 

 

あの日の夜、家族の前で私の気持ちを吐露すると、少しずつだけど

改めて新しい家族に慣れてきた

 

姉に対して抱いていた劣等感もなくなって、気持ち的にも楽になった

 

 

 

 

 

「今日は部活ないから、一緒に帰ろうね♪」

 

「え~どうしようかな~?」

 

「ちょっと~!そんな意地悪しないでよ~💦」

 

「冗談だよ、校門で待ってるからね」

 

 

 

 

 

 

こんな軽口が言える日が来るなんて思いもしなかった

 

でも、それができるようになったのは、彼女が私に対して愛情を持っていたから

 

 

 

 

じゃあ、また放課後にね♪ と下駄箱で別れる

 

周りを気にせず、私に向かって手を振ってくる姉に苦笑いだけど

私も手を振り返す

 

そんな吐く息が白く寒い冬の朝、だけど心はとても温かい

 

 

 

FIN

 

 

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こんばんは、今週から乃木中・そこさく・ひなあいがスタートしましたね♪

 

蒼空さん からのリクエストでした、ありがとうございました!

 

 

W佐々木の姉妹学パロ、再婚で姉妹になった2人、姉の久美に劣等感を抱く妹の美鈴、紆余曲折あって喧嘩もするが仲直り、というシチュエーションでした

 

普段のこのブログでは逆立ちしても出てこない、リクエストならではの

シチュエーションですね、わちゃわちゃは封印して、久しぶりに真面目に

なりました(笑)

 

この二人は何回か書かせてもらいましたが、姉妹パロが多かったかなと

苗字が同じで年齢差もあって、イメージしやすいからですね♪

 

余談ですが、同級生はとしきょん、担任は若林先生をイメージしています(笑)

 

 

 

はい、筆?が乗って長くなりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました!

 

次回ラストリクエストとなります、次回もお付き合いよろしくお願いします(*^-^*)