怪談と井戸 | 劇団ふだい稽古日誌

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すみません。もちおんです。


 突然ですが、怪談ではよく井戸が登場します。昔で言うところの四谷怪談、番町皿屋敷など、最近ではリングの貞子などが井戸から出てくる系怪異として語られます。さて、ここではこの井戸というものがなぜ怪談のネタとして用いられるのかを考えていきましょう。


 百人一首の『わたのはらやそしまかけてこぎいでぬと人には告げよ海人の釣船』でお馴染み平安時代の参議篁が井戸を介して地獄に通っていたという逸話があるように、井戸は地獄に繋がって居ると考える話が多くある。一方、井戸には神が宿っており、井戸に向かって暴言を吐く、刃物を投げ捨てるなどの行為は禁忌に当たると考え、井戸を神聖化する文化も存在する。


 これらの相反する要素は井戸の『水を汲み上げる』という機能が関係していると考える。中国由来の概念で、風水というものがある。今では一般的な概念になったが、元々風水は運気は風によって流れ、水によって留まるという郭璞の『葬経』という書に記された概念が元になっている。水辺には霊が集まりやすいという俗説はこの風水説より現れたものであると言えるだろう。


 ここで、風水において、悪い気が流れてくる方角を鬼門、流れていく方角を裏鬼門と呼び、そこに配置すると良いもの、悪いものが説かれている。鬼門、裏鬼門に配置すべきで無いものには、玄関、窓、門などの他に、井戸、トイレなどの水周りの物が挙げられる。門や窓は悪い気が入ってこないように、水周りの物は悪い気が留まらないようにという考えである。


 その中でも井戸が怪談において特段と多くモチーフとされている理由としては、井戸の形状が考えられる。井戸の1度落ちたら戻れない縦に長い形状が死後の世界への道として、その先にある水が三途の川として例えられる。


 これらの理由から、井戸は怪談において幽霊が現れる場所としてマジいい場所であると考えられる。