多目的タイ語「ミー・トゥラ」の効用性 | ローリング・ストーンズ野郎の雑記
僕が準日常的に顔を出している、ヨーロッパ本家のある多国籍企業のある部署の空気が気のせいか、ピリリと変わっていた。

が、話をきいてみると、気のせいではなく、代表者が新しくなったことで、社員の度重なる遅刻、無断欠勤には賃金カットが科せられることになったらしい。

それまでは、社員スケジュール板には、誰かしらの欄に「SICK」もしくは「Being SICK」と書き込まれており、早い話が、部署員数名が「SICK」のローテーションを以って週休三~四日を繰り返しながら、通常の給与を得ていた。
これでは、「他人のサイフ」を異常に気にする 一定層以下のタイ人ではなくとも、他の部署の頭痛気味でも薬を飲んでがんばっている、真面目な(=ごくごく健全な)社員が面白いワケがない。

「ピリリと変わって」と云っても前向きな雰囲気とは言いがたく、どこかに不満をためこんだ空気が充満しているのは、中途ハンパな自主退社では退職金をムシリ取れない から、解雇されるのを待っているのだろうか。
「病欠なら、お医者さんの診断書を出せばいいんじゃない?」というせっかくの長期療養経験者の僕のアドバイスも、わけのわからない紙キレを捏造したことで、上層部の心証を害してしまった。

今は「SICK」の代わりに白板には「LEAVE(有給休暇)」の文字が躍っていますが、年休を使い果たした時には、一定の社会層以下のタイ人が得意とする「ミー・トゥラ」が書き込まれるのだろうか。
多国籍社員職場の公用語は当然イングリッシュなので、タイ語「ミー・トゥラ」は英語に直さなくてはいけない。

「ミー・トゥラ」とは、直訳すると「用事がある」。
「用事がある」という言葉に「どんな用事?」の追求はご法度、的な不文律がその社会層にはある。
要は、何か都合の悪い事態にはいつでも逃げることができる(と思っている)伝家の宝刀が「ミー・トゥラ」。

先日、僕が乗車していたタクシーに無法右折で突っ込んできた女性ドライバーも、保険会社が到着する前に「ミー・トゥラ」のキメ台詞で事故現場から逃げようとしたけれど、商売道具を破損されたタクシー運転手の前にはそうは問屋が卸さなかったようです。

ちょっと前ならばこうした場面では、収入面では格下のタクシー運転手が不条理に衝突されてもペコペコしていたものですが、多少の代償はあっても弱者を正当に守るシステムが着実に根付き始めていることはイイことだと思います。

不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書 1926)/河合 太介