
昼メシ終えて机に戻ると、経理の人間から「これ、ギースさんのですね。預かっておきました」と書類を渡された。
僕は「あ、それはどうも」とカバンにしまう前に書類を確認したところ、それは僕の非外資系の銀行個人口座の外国取引記録だった。
「それはどうも」と明るい笑顔ですませてよいものなのか、悩みに悩んだ末に経理の女性に事情を尋ねてみると、階下の銀行窓口係が「これ、あなたのところの日本人に渡してください」と封筒にも入れずに取引記録を託したのだという。
この国には10ン年住んでいても、いまだに「これが日本だったら」「イギリスだったら」「シンガポールだったら」的に困惑することが少なからずありますが、「ありえない話」が銀行レベルにまで及んでいたことには、一瞬、頭がクラクラした。
もっとも、他人に見られて狼狽動揺しなくてはならない金額でもないし、慌てて隠匿しなくてはいけない性質の取引(例えば、国外アダルト認証サイトなどでの荒稼ぎ)でもなかったので、僕はコトを荒立てることは自重した。
もともとガラス張りの部屋で暮らしているようなタイ社会なのだから、この先も他人に知られて困るような金額は出納しなければイイだけの話なのかも知れない。
それでもやっぱり、「経理は「言っちゃだめよ」と何人かに話してるし、もし、ここに強盗が入ったりしたら、銀行はどうするんだろう?」と家の人間に話してみたところ、家人は月曜日早朝に銀行に談判することになりました。
去年の「宅配業者、勝手に配送先変更しかも誤配」事件の時も、先方の第一声が「以後、気をつけます」ではなく「ギースさんと面識がある配達担当員が気を利かせて配送先を変えただけなので、悪気はなかった」だったのでおおごとになってしまったけれど、やっぱり話さなきゃよかったかなァ。