昔の人の言葉から始めよう.
『祇園精舎の鐘の聲、諸行無常の響あり。娑羅雙樹の花の色、盛者必衰のことはりをあらはす。おごれる人も久しからず、只春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。』
この世に常ならぬものはない.花は枯れるもの,人は老いるものである.そして生きとし生けるものはいずれ死ぬのだと,この短い文は端的に教えてくれる.そこに人の思いや感情といったものはない.ただ厳然とした事実が無表情に横たわっているだけである.
人は死ぬのである.私も読者も例外なく死ぬのである.これを受け入れられない者はまだ子供である.これを考えない者も子供である.
とはいえ,大概の人はこの事実と向き合わない.そのようなことを考える暇がないというのもあるが,多くの場合このような恐ろしい事実と向き合うのが恐怖だからである.そしてこのあまりにも未知なることに対して思索を広げることが無意味だと知っているからである.
私もそうだ.すっかり日常に埋没し目を逸らしている.太陽をじっと見続ければ盲になってしまうと知っているから.