-あらすじ-
“2009年本屋大賞“を受賞した湊かなえのミステリー小説を、
中島哲也監督が松たか子を主演に迎えて映画化。松たか子は
自分の愛娘を殺害した教え子の男子中学生に復讐する女教師という
難役に挑む。その他、空気の読めない熱血教師に岡田将生、
少年B・直樹の母親には木村佳乃が扮し、クラスメイトの
少年少女たちは無名の中学生をオーディションし、37人が選ばれた。

出演
松たか子 岡田将生木村佳乃

当に、本当に恐ろしい映画です。

物語は、ひとつの事件を巡って何人もの告白により展開します。そこには人それぞれの想いがある。悲しみや切なさ、失望や憎しみ。観ながらそれらに対する様々な感情が去来します。

しかしこの映画は、そんな観る者の気持ちを置き去りにするかのように次々と痛々しい現実を突きつけながらラストまで走り抜け、観終わった時には咀嚼し切れない想いと共に人としての根源的な命題を突きつけます。
衝撃的ではありますが、単に世相や社会問題を風刺しようとしたものではなく、人としての在りようを淡々と描いている所に怖さを感じました。

いわばあくまで単なるドラマに徹している映画ですので、変に問題提起する意図やそれこそ有り体のカタルシスを盛り込んでいない点が個人的にはこの映画の鋭さを増しているように思うのです。

おそらく内容には大きく意見が分かれる所だと思いますが、それこそがこの映画の持つ鋭さであり、面白さのような気がします。

また、原作にあった一人ひとりの内面を伝え切れていないという部分は大いに感じましたが、小説には小説の、映画には映画の良さがハッキリあると確信する内容でもありました。
この映画を観ていて、中島監督は小説では表現できなくて映像だから出来るものが何かという事を確信して描いているんだろうなぁと、なんだかそんなふうに思います。

今は、映像化は難しいだろうと思っていた原作を圧倒的な疾走感と冷徹な眼差しで描き切った中島監督に、ただただスゴイ!という気持ちでいっぱいです。こんなにも曇り空が印象的で、クールなグレーを演出している映画はそう多くないのではないでしょうか。映画全体を通して流れている繊細な楽曲群も頭に残ります。

あ、あと余談ですが、おそらくRadioheadの「Last Flowers」がこんなにもマッチする映画は無いだろうと思っています(笑)
限定版でしか聴けないヘヴィーな曲を、さらにヘヴィーな映画で使う所がニクい!