フランチシェク・イーレクのシンフォニエッタ | geezenstacの森

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フランチシェク・イーレク

シンフォニエッタ

 

曲目/ヤナーチェク

シンフォニエッタ (1926) 

1. Allegretto    2:13

2. Andante    5:42

3. Moderato    4:42

4. Allegretto    2:44

5. Andante con moto. Allegretto    6:57

タラス・ブーリバ (1918) *

1. アンドレイの死    8:19

2. オスタップの死    4:58

3. 予言とタラス・ブーリバの死    8:32

 

指揮/フランチシェク・イーレク

演奏/ブルノ国立フィルハーモニー管弦楽団

 

録音:1986年①4月14-16日、②6月25-26日、ブルノ、スタディオン

P:ペール・レネチェク、ウラディーミル・ココナリィ*

E:エリック・クネズ

 

SUPRAPHON COCO-6805

 

 

 

 多分このCDはほとんど知られていないのではないでしょうか。このCDはイーレクが1990年に来日した際の来日記念盤として発売された時のものです。このジャケットと同じようなデザインでコシュラーのCDも発売されていますからよく間違われます。日本ではあまり馴染みのない指揮者ですが、ヤナーチェクやスメタナの大家で、彼らのオペラは全曲録音を残しています。この録音もヤナーチェクの管弦楽作品集を録音する流れの中で収録されたものです。このCDの表記はフランチシェク・イーレクとなっていますが、最近ではフランティシェク・イーレクと表記するのが一般的なようです。

 

 さて、ブルノはヤナーチェクの生まれ故郷ですから、このオーケストラは張り切って演奏しています。録音スタッフもチェコ・スプラフォンのスタッフですが、スプラフォンには日本コロムビアのノウハウが投入されていますから早くからデジタル録音が普及していました。このイーレクの録音の前には1982年にアンチェルも当局を録音していますから録音のノウハウはきっちりできていたと言っていいでしょう。

 

 小生の中では同じスプラフォンながらアンチェルの演奏がディフェクト・スタンダードですからついついそれと比較してしまいますが、第1楽章の冒頭のファンファーレからカラッとパリッとしたサウンドです。ただ、立ち上がりはやはりアンチェルに軍配が上がります。長所としてはリズムを刻むティンパニは、こちらの方がやや大きめに収録されていて、バランスは良好です。アンチェルは奥に引っ込んでいますからねぇ。ホールを使わずスタジオ収録のメリットでしょうか。ただイーレクは1913年生まれと旧タイプの指揮者に分類されますからコーダはのまとめはややリタルダンドをかけて終了させています。


 第2楽章は冒頭の木管も響きにちょっとキレがなくだいぶ常識的です。トランペットのファンファーレ主題も地味でおとなしめです。反対に第3楽章は冒頭こそはモデラートのテンポで始まりますが、中間部からはアンチェルに負けず速いテンポでぐいぐい進んでいきます。中間部の盛り上がりはトランペットもいい感じ。ホルンも上手く纏めています。


 第4楽章は推進力のある刻みで推進力があります。ただ程なく登場するチューブラーベルの響きはやや物足りない響きでやや腰砕けになっている歯残念です。ここは見せ場ですからもっとガンガン叩いてほしい気もします。第5楽章はは冒頭フルートの響きがとくちようなのですが、やや平板でもう少し音を転がしてほしいところです。第1楽章と第4楽章はバンダの金管が大活躍しますが、そこはツボを心得ていてトランペットとチューバの響きは聴き応えがあります。ただ、スタジオ録音でバランス優先か、ホールトーンは豊かながら金管バリバリの迫力はアンチェル盤にはちょっと及んでいないようでに感じられます。

 

 

 併録曲はこのCDでは「タラス・ブーリバ」が収録されています。ヤナーチェクは、オーストリア・ハンガリー帝国の支配に対して反発し、汎スラブ主義に近い立場から民族主義に共感し、ロシアびいきの面もあったのだそうで、この曲もゴーゴリの原作「隊長ブーリバ」をもとにしたものです。作曲者自身、30代半ばで自分の息子を失う経験をしており、心情的に共感するところもあったのかもしれません。しかしこの頃は、まさかそのロシアが、戦車で祖国を蹂躙するとは思いもよらなかったでしょう。第一次大戦の最中の時期に、祖国独立の思いを重ねて書かれ、新生チェコスロヴァキア共和国軍に捧げられました。初演は、戦争が終結して三年後の1921年、フランティシェク・ノイマン指揮ブルノ国民劇場オーケストラにより行われています。この指揮者とイーレクとの関係は調べがつきませんでした。

 

 併録曲はこのCDでは「タラス・ブーリバ」が収録されています。ヤナーチェクは、オーストリア・ハンガリー帝国の支配に対して反発し、汎スラブ主義に近い立場から民族主義に共感し、ロシアびいきの面もあったのだそうで、この曲もゴーゴリの原作「隊長ブーリバ」をもとにしたものです。作曲者自身、30代半ばで自分の息子を失う経験をしており、心情的に共感するところもあったのかもしれません。しかしこの頃は、まさかそのロシアが、戦車で祖国を蹂躙するとは思いもよらなかったでしょう。第一次大戦の最中の時期に、祖国独立の思いを重ねて書かれ、新生チェコスロヴァキア共和国軍に捧げられました。初演は、戦争が終結して三年後の1921年、フランティシェク・ノイマン指揮ブルノ国民劇場オーケストラにより行われています。この指揮者とイーレクとの関係は調べがつきませんでした。


 この「タラス・ブーリバ」はシンフォニエッタに先立つこと8年前の作曲です。いずれも死を扱ったタイトルのつく3曲でまとめられています。この作品にはコーラングレが使われており、第1楽章からいい味を出しています。イーレクはオペラ指揮者でもあったのでこういうドラマティックな表現はお得意のようです。第3楽章は冒頭から弦の刻みに緊張感があり、ドラマティックな表現で楽しめます。タラス・ブーリバの登場する第3曲はオルガンも使われていますが、多分スタジオにはないはずですから後から編集したものと思われますが、違和感はありません。

 

 両曲とも録音バランスが良くなかなか聴かせる演奏です。しっかりYouTubeにも音源がアップされていました。